日本の食文化を未来につなぐ──食品専門のM&Aコンサルタントが語る業界の未来

広報室だより
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大手保険会社から2022年12月に日本M&Aセンターに入社し、産業戦略3部で食品チームに所属するM&Aコンサルタントの岡田 享久さん。プライベートではグルメインフルエンサーとして約5万人のフォロワーを持つ岡田さんに、業界の未来や食に深く関わるようになったきっかけについて聞きました。

過去最高水準に増えている食品業界のM&Aの現在地と、これから

──近年の外食業界におけるM&A全体のトレンドについて、どのように見ていますか。
まず件数で見ると、食品業界全体でも外食業界でもM&Aは大きく増加しています。コロナウイルス感染症流行前の2017年から2018年のピーク時と比べても、倍近い件数で過去最高水準と言っていい状況です。背景として大きいのは、やはりコロナ禍が落ち着いた以降の環境変化です。原材料費や物価の上昇が続くなかで、食品・外食業界全体として価格転嫁が進みました。その結果、大手企業を中心にキャッシュが溜まり、「余剰資金を投資に回すことができる」という動きが出てきたこと、同時に価格転嫁に顧客が付いてこられないお店が苦しくなり経営者心理からもM&Aで大手入りすることがブランドの維持に繋がると考えたことの両面が、大きな要因だと思います。

──外食業界では、どのような構造変化が起きているのでしょうか。
大手グループとファンに支持される小規模店という二極化が進んでいます。中間層は原価高騰や人手不足の影響を受けやすく、今後は業界再編がさらに進むと考えています。実際に、ある調査では外食産業全体に占める売上高の上位30社に占める割合は2000年の約10%から、2030年には20%を超えると予想されており、大手グループに外食産業の集約化が進んでいる現状があります。

──外食業界のM&Aならではの難しさは、どこにありますか。
他業種と比べると特定の譲受企業による連続買収が起こりづらい事が特徴です。飲食店では価格帯、立地、業態、経営者の考え方など、千差万別であり全て1点ものです。「食」なので好き嫌いは個人の感性に依存する部分も多く、このエリアのこの業種ならM&Aを実行するという事はありません。特に譲渡企業の規模が小さくなればなるほど、幅広くお相手探しをしないとお相手を見つけることができません。そこが難しいところですが、日本M&Aセンターではその譲受候補企業へのアプローチ数を確保することができるので、安心してお任せいただけます。

──最近、特にM&Aが活発な分野はありますか。
食品業界全体では、冷凍食品や菓子・パン業が安定して人気があります。冷凍食品は保存性が高く、成長戦略を描きやすいため、菓子・パン業は時流に左右されない底堅い需要があるためです。外食業界では、お酒に依存しない業態です。居酒屋業態は、飲酒人口の減少や宴会文化の変化もあり、以前ほど評価されにくくなっています。一方で、ラーメンや定食など、いわゆる「日常食」は安定した需要があり、引き合いも強いです。また、地域に根付いたブランドも非常に人気があります。その土地の文化や味として長年支持されてきたものは、他地域の企業が一から作ろうとしてもなかなか再現できません。そういった「時間をかけて染みついた価値」は、M&Aでしか手に入らないため、買い手からの評価が高くなります。

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常連客の支持──ファンの存在が重要

──買い手企業は、どのような視点で外食企業を評価しているのでしょうか。
重視されるのは売上高と客数ですが、単に数字が大きければ良いわけではありません。立地や店舗規模に対して適正な水準を上回っているかが評価され、たとえ赤字でも客数が確保できていれば改善余地があると見られます。

外食は設備産業ではないので、今ある設備をどう使うかではなく、「次に店舗を増やしたときに、同じようにお客さんが来てくれるか」という将来の再現性に投資するビジネスです。そのため、評価方法としても純資産を基にした評価方法ではなく、将来価値を見込んだマルチプル法が使われるケースが多いです。あわせて、常連客に支持されているなど「ファンがいるかどうか」も、買い手が判断する重要なポイントになります。

──食品業界の課題は何だと感じていますか。
大きな課題は、人材不足だと感じています。特に、将来を見据えて現状維持を脱し成長できる経営を考えられる人材が業界全体で少なく、利益率も低くなっています。日々の現場業務が忙しく、目の前の営業を回すことが優先されがちです。その結果、成長戦略まで考える余力が持てない企業も多く、M&Aを選択肢として考えないまま機会を逃しているケースも少なくありません。業歴の長い地域では優良企業とされている企業でもこういった特徴は顕著です。

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一杯の油そばから始まった、“食”と向き合う仕事

──次は岡田さん自身のことについてお伺いします。まずは経歴を教えてください。
新卒で大手保険会社に入社し、株式や債券などの資産運用業務を担当していました。もともと投資や金融の世界が好きだったこともあり、「日本全体のお金の流れ」を俯瞰できる仕事に魅力を感じました。転機となったのは、大学時代のサークルの先輩との飲みの席です。「一度会ってみたらどう?」と紹介してもらい、入社前に証券チャネル チャネル部長の三上 隆史さん(https://colors.nihon-ma.co.jp/post/people-ourphilosophy-mikami)とゴルフをご一緒させていただきました。そのときに感じたのが、「M&Aコンサルタントって、雰囲気もかっこいい、余裕もある、こんな大人になりたいな」という率直な印象でした。そこで本気で挑戦したいと思い、入社を決意しました。

──入社後、食品チームを志望された理由は何だったのでしょうか。
実は前職時代から、グルメインフルエンサーとして活動していました。きっかけはコロナ禍で苦しんでいた、大学近くの油そば屋さんです。「少しでも集客の手助けになれば」と思い、SNSで発信を始めたのが最初です。1年間で約400食を食べ歩き、Instagramのアルゴリズムを研究し投稿を試行錯誤し、1年で約5万人までフォロワーを伸ばしました。そうした経験から、飲食店経営者と話す機会が自然と増え、「将来は食に関わる仕事がしたい」という思いが強かったので、食品チームを入社面接の時点で志望しました。

──食品専門のM&Aコンサルタントとして、必要なスキルとは何でしょうか。
仕事自体は業種問わず大きく変わりません。M&Aのプロセスそのものは、業界を問わず共通しています。ただし、食品業界ならではの論点を理解しているかどうかは重要です。たとえば飲食店のM&Aでは、クロージング直前に店舗の賃貸借契約条件が論点になることが多くあります。以前、「この立地・坪単価なら、必ず賃料交渉が入る」と事前に賃料相場を調べ買い手へ伝えていた案件があり、実際に想定通りの条件変更がありました。事前に共有していたことで、スムーズに成約できた経験があります。シフト制の会社も多いので、譲受企業が上場会社の場合、変形労働制を管理できず未払の残業代が発覚し、買収価格に大きく影響することもあります。
ただそれでも、経営者以上にその会社、その事業を理解することはできません。だからこそ大切なのは、業界の専門家であること以上に、『M&Aの専門家としてオーナーに寄り添えるか』どうかだと思います。

──最後に、これからM&Aを検討する経営者の方へ、メッセージをお願いします。
ミシュランの星獲得店舗数からも分かるように、『日本の食産業は間違いなく世界一です。』そんな日本の食文化を未来に繋げるために、強い企業、優秀な経営者がもっともっと必要です。M&Aを通じて、一緒に食品業界を盛り上げていきましょう!

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