「第4回中小M&A研究教育センター助成」募集開始!論文部門受賞者インタビュー “自社の経営統合が研究のきっかけに”

広報室だより
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日本M&Aセンターホールディングスと神戸大学大学院経営学研究科が連携し設置した「中小M&A研究教育センター(MAREC)」は、中小M&Aに関わる研究者の育成と、学術的な研究成果を社会に還元して日本経済の活性化や社会課題の解決に貢献することを目的として、毎年「中小M&A研究教育センター助成」を実施しており、今年も2025年8月より募集を開始します。

2024年度、「第3回中小M&A研究教育センター助成」論文部門で銀賞を受賞した中村有沙さんに、体験談を聞きました。中村さんは、LINEヤフー株式会社 人事総務統括本部 ピープルデベロップメント本部で本部長をつとめる傍ら、2023年4月に神戸大学MBAに入学。在学中に書いた論文で受賞を果たし、2025年4月からは博士課程に進学されています。実務と研究の両面からキャリア開発・組織変革に取り組む中村さんに、受賞の経緯やキャリアと学びの両立、今後の展望を聞きました。

「M&Aが従業員のキャリアショックに及ぼす影響」を研究~神戸大学MBAで得た学びと実践

-神戸大学MBAに入学されたきっかけを教えてください。

人事の領域でずっとキャリアを積み重ねてきましたが、専門領域を持つことで、自分の経験だけでなくもっと様々な角度から組織課題を解決できるようになりたいと思い、MBAに入学しました。
人事や組織論の領域で知られる大学院をいくつか見学し、神戸大学が自分にあっていると思ったので決めました。この領域で有名な鈴木竜太教授の存在も大きかったです。
入学後は、遠隔で仕事ができる環境だったこともあり、思い切って神戸に引っ越し、東京には仕事で月1~2回通う生活をしていました。

じつは合格してから入学するまでの間に、勤めている会社で経営統合がありました。MBA入学、神戸への移住とほぼ同じタイミングでPMIまっただなかとなったわけですが、経営統合は本当に未知の領域で、何か一つ決めるのにも苦労しました。文化の異なる大企業同士のM&Aの難しさを肌で感じ、葛藤した経験が研究テーマを決めるきっかけになりました。

-助成への応募のきっかけは。

MBA卒業前のタイミングで鈴木教授から応募を勧められ、M&Aが従業員のキャリアショックに及ぼす影響に関する研究論文を応募しました。助成の存在を知らなかったのと、MBA生も応募できると思っていなかったので、勧めてもらわなければ応募しなかったのではと思います。

実務と研究では問題解決プロセスやアプローチが異なる

-受賞してみてどうでしたか。研究からどのようなことを学びましたか。

研究者としてはまだまだ初学者なので、受賞の知らせを受けたときは驚きましたが、評価いただいたことは嬉しかったですね。意外とMBAの外の人に評価されたりフィードバックを受けたりする機会は多くないので良い機会でしたし、新たな視点を得ることができるので大きなプラスになりました。

研究してみて、多様な視点で物事を見られるようになりました。たとえば人事制度の変更など、経営や人事は大きな影響があると考えていても、それぞれの組織や社員の温度感は違ったりして、これは大きな気づきでした。視点が変われば捉え方も違うんですよね。これは、人事の立場でヒアリングしてもわからないことで、アカデミックな手法でアンケートやインタビューを行ったからこそ得られた気づきでした。

研究における問題解決プロセスと実務の違いも学びました。神戸大MBAは研究のプロセスから論文の書き方までとても丁寧に教えてくれます。実務と異なるアプローチ方法を身につけられたことは大きな財産です。

MBAに通う前は、過去の人事としての経験をもとに判断していくことが多かったのですが、経験以外の引き出しが増えました。実務での経験を研究に活かし、また研究で得た知見を実務に還元することができているという実感があります。

―MBAと仕事の両立は大変ではなかったですか。

平日18時まで仕事をして、そのあと学習して、という生活はとても大変です。時間が足りないんです。これは私以外の同級生も皆言っていますが、「限界突破」を経験し、総合的なキャパシティが上がりました。笑
仕事との切り替えをするために、授業中は仕事のことをひきずらないように心掛けていました。ただやはり、体調を崩すと何もできなくなるので、健康管理には特に気を付けていて、どんなに忙しくても睡眠時間の確保は最優先にしていました。時間の使い方や優先順位付けのスキルは向上しますね。

人にまつわる研究で、経営課題や現場の問題の解決に貢献したい

―2025年4月からは博士課程に進学されたそうですね。今後の目標を教えてください。

神戸大のMBAは1年半なので、2024年秋に卒業し、今年の春に推薦入試で博士課程に入学して再び鈴木先生に師事しています。今は東京に戻っているので、月1~2回程度ゼミ等で神戸に通い、数年かけて研究を進めていきます。社会人の方も多く、さまざまなバックグラウンドの方がいて刺激になります。

もともとMBAには自分の専門領域を持ちたいという思いで入学したのですが、MBA生活でいっぱいになっていた部分もあり、やりきれたかというとまだまだ専門性を究められたとは言えないと思っています。そこで、さらなる人事・組織領域のプロフェッショナルを目指し研究の門を叩きました。鈴木先生が歓迎してくれて、「やりきれるかは自己責任だから気負わず来てみたら」と言ってくれたのも影響していますね。

今後も人にまつわる研究を続けながら、仕事では人事責任者として研究を通じて得た知見を活かし経営課題解決に役立つアウトプットを深めていきたいです。特に、いつも現場を支える存在であるミドルマネージャーの糧になるような研究を進めていきたいと思っています。

―ありがとうございました。今後も中村さんのご活躍を応援しています!

「中小M&A研究教育センター助成」は、大学・大学院を問わず全国から応募が可能で、中村さんが受賞した「論文部門」のほか「研究助成部門」があります。
過去3年の中小M&A研究教育センター助成では、懸賞論文部門で金賞2組、銀賞1組、銅賞2組が受賞、研究費助成部門では20件が採択されました。
今年度の募集においても、全国からの多くの皆様のご応募をお待ちしております。

「第4回中小M&A研究教育センター助成」募集要項
https://b.kobe-u.ac.jp/marec/support.html

著者

M&A マガジン編集部

M&A   マガジン編集部

日本M&Aセンター

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