建設業同士のM&A、専門家によるPMIで体制整備し上場企業基準へ

令和建設株式会社(茨城県)×株式会社巴コーポレーション(東京都)

譲渡企業情報

  • 社名:
    令和建設株式会社(茨城県)
  • 事業内容:
    総合建設業
  • 売上高:
    約13億円(2024年6月期)
  • 従業員数:
    約26名(2024年7月末時点)

譲受企業情報

  • 社名:
    株式会社巴コーポレーション(東京都)
  • 事業内容:
    総合建設業ほか
  • 売上高:
    約333億円(2024年3月期)
  • 従業員数:
    約466名(2024年7月末時点)

※M&A実行当時の情報

建設事業を展開する巴コーポレーション(東京都)は、1963年10月に東京証券取引所(現在の東証スタンダード市場)に上場する老舗の建設会社です。同社は、北関東エリアでのシェア拡大を目指す中、2024年7月に令和建設(茨城県)とのM&Aを実行し、M&A成約前から譲渡企業の経理体制の早期整備を重要課題と捉え、日本PMIコンサルティングに支援を依頼。さらに、譲渡企業の顧問税理士も継続して関わり、スムーズな会計基準の統合を実現しました。経理体制構築のキーパーソンの皆様に、統合までのプロセスやPMIのプロによるコンサルティングの効果について伺いました。(取材日:2025年12月18日)

日本PMIコンサルティングによる主なサポート内容

  • 業務委託契約 2024年7月~(継続契約中)

【内部統制の統合】

  • 全社統制の構築支援
  • 決算財務報告プロセスの構築支援

【会計基準の統合】

  • 会計基準適用(従来とは異なる会計基準による決算書の作成)
  • 決算数値のレビュー
  • 決算早期化
  • 監査法人対応
  • 連結対応
  • クラウド会計ソフトの導入支援
  • 決算業務の内製化支援

建設業界の人手不足がM&Aのきっかけに

――M&Aをされた経緯を教えてください。

譲受企業 巴コーポレーション 三木様: 当社は建設事業を展開する中で、民間工事に強みを持つ一方、公共工事分野の強化を課題としていました。特に、工場のある栃木県周辺の北関東エリアのシェア拡大を目指す中で、茨城エリアで公共工事を安定的に受注している令和建設と出会い、「お互いの強みを高め合える」と感じたのがM&A検討のきっかけでした。

譲渡企業 令和建設 由良様: 当社は長年、茨城県に根差した建設会社として安定した経営を続けてきましたが、人材不足や今後の公共工事拡大を見据えた体制強化が課題となっていました。具体的には「今後10年間で70名採用」という目標を掲げており、その実現に向けてM&Aを検討する中で、巴コーポレーションの「経営の自主性を尊重する姿勢」が決め手となりグループに入る決断をしました。

――M&A後の統合プロセス(PMI)についてはいつごろから考えていましたか?

三木様: 成約の半年ほど前、M&Aの成立が見え始めた段階からPMIを意識し始めました。特に上場企業グループになっていただく上で、会計と内部統制の統合は避けては通れない大きなテーマになると考えていました。

最大の懸念は、四半期決算に対応するため、非上場である令和建設の会計体制を短期間で弊社基準に変更しなくてはいけない点です。社内にそれに対応する人材の余裕はなかったので、早い段階から「外部の専門家と一緒に進める必要がある」と判断し、日本PMIコンサルティングに依頼しました。

経験したことのない業務、PMIのリアルな苦労

――具体的に依頼したサポート内容について教えてください。

三木様: 内部統制については、規程の整備と親会社基準をベースにした内部統制文書の構築をお願いしました。こちらはおよそ3か月で整備できました。

会計については、第1フェーズとして約4カ月かけ、四半期連結決算を見据えた月次決算体制づくりと四半期連結決算パッケージの作成、会計基準を「工事完成基準」から「工事進行基準」へ移行するための支援をお願いしました。
続く第2フェーズでは、約5カ月かけて決算業務の完全内製化に向けた支援を、さらに第3フェーズではクラウド会計ソフトへの移行を支援いただきました。会計分野については当初の予定から延長し、現在も継続してサポートいただいています。

株式会社巴コーポレーション 取締役 専務執行役員 三木 康裕 様

株式会社巴コーポレーション 取締役 専務執行役員 三木 康裕 様

――PMIは実際にスムーズに進んでいきましたか?

譲渡企業 令和建設 野口様: 正直に言えば、会計についてはかなり大変でした。総務・経理の業務は私を含めて3名体制で、連結決算や四半期ごとの期限、会計基準の変更など、これまで経験したことのない業務が一気に押し寄せ、不安しかなかったのが本音です。

令和建設株式会社 常務取締役 野口 直樹 様

令和建設株式会社 常務取締役 野口 直樹 様

特に苦労したのは、四半期決算の提出期限が想像以上にタイトだったことです。これまで慣れ親しんできた請求ルールや業務サイクルでは間に合わないことがわかり、関係各所との調整に追われました。
もう一つ大きな課題となったのが、「進行基準」への切り替えです。「どのタイミングで、どこまで売上を計上するのか」という考え方そのものを変える必要がありました。最初の四半期決算までは、連日夜遅くまで業務が続きました。

ただ、いずれの場面でも日本PMIコンサルティングの担当者と私たちの顧問税理士の関根先生が間に入り、「なぜこの処理が必要なのか」「監査目線ではどう見られるのか」を一つひとつ整理してくれたことで、徐々に理解が進みました。PMIのプロが寄り添ってくれたこと、さらにこれまでずっとお世話になってきた関根先生に深く関わっていただけたことが、何とか乗り越えられた大きな要因だと思っています。

――譲渡企業の顧問税理士は、M&A後に交代されるケースも多いかと思いますが、継続を判断された理由は?

三木様: 今回は最初から「継続」が前提でした。令和建設の事業や数字を誰よりも理解している存在であり、PMIという難局において現場との橋渡し役になっていただけると考えたからです。弊社も十全に理解できていない状態で税理士を交代することは、むしろリスクが高いと判断しました。

――顧問税理士として、M&A後も継続と聞いたときはどのように感じましたか?

令和建設 顧問税理士 関根様: 上場企業の会計に精通した税理士へ交代されるものと信じて疑わず、引き継ぎの準備を進めていました。そもそも都内には、知見のある公認会計士・税理士が沢山いらっしゃいますし、一般的には親会社の体制に合わせるのが自然だと思っていたからです。ところが、「令和建設を理解しているからこそ担ってほしい役割がある」と言っていただき、M&A=顧問交代ではないケースもあるのだと正直驚きました

税理士法人ゼニックス・コンサルティング 税理士 関根 俊輔 様

税理士法人ゼニックス・コンサルティング 税理士 関根 俊輔 様

PMIのプロがハブになり、想定以上のスピードで完了

――日本PMIコンサルティングのサポートを振り返っていかがですか?

野口様: 単なるアドバイザーではなく、「現場に入り込むPMI」でした。途中段階で細かな指摘を受け、そのたびに修正するのは大変でしたが、結果的に「後から監査で指摘される」という事態を未然に防ぐことができました。次第に自分たちでも「これはまずいな」と判断できるようになってきて、社内の考え方そのものがアップデートされたと感じています。岡田さんは細かいところまで妥協せず、そして本当にマメに連絡をくれるので、最後まで伴走いただけるという安心感がありました。

関根様: 私も最初に統合後のゴールとロードマップを示してもらえたことで、迷わずPMIを進められました。常に「今どのフェーズか」を共有でき、対話しながら納得感のある統合ができたと思います。税理士としても、上場企業基準の会計に携われたことは非常に貴重な経験になりました。

三木様: 日本PMIコンサルティングには、中立的な立場で弊社・令和建設・税理士をつなぐ“ハブ”の役割を担ってもらいました。関係者が密に連携できたことで、誰一人かけても成功しなかったと思える体制で進められたと感じています。会計対応も、想定以上のスピードで安定しました。

――M&Aによるシナジーをどのように見ていますか?

三木様: 今期は前年を上回る営業利益が見込めており、来期以降も大きな案件が控えるなど、おかげさまで期待を大きく上回る成果につながっています。人材面でもすでに3名の技術者が令和建設に出向しており、今後も派遣を検討しながらシナジーを最大化していきたいと考えています。

野口様: 今回のM&Aを検討した背景には、人材不足の解消という大きな課題がありました。企業集団制度を活用し、親会社から技術者を派遣してもらえる可能性が広がったことは大きな前進です。グループとして人材を補完し合える体制が整い、目先の人材不足への対応だけでなく、将来を見据えた事業展開にも安心感が生まれました。今後は採用活動も栃木エリアまで広げたいと考えています。

経営の自主性を保ちながら、必要な部分ではしっかりと連携するという今回の統合プロセスは、私たちが描いていたM&Aの目的をより確かなものにしてくれたと感じています。

関根様: 今回のM&Aで、顧問税理士の役割が進化したと感じています。通常、譲渡企業の顧問税理士は「仕事が減るのでは」と感じる場面で、今回は逆にこれまで以上に月次決算や管理の中核に関わり、より重要な役割を担うことになりました。M&A=税理士の交代ではなく、PMIを支えるパートナーにもなれると実感しています。

担当者コメント

株式会社日本PMIコンサルティング 岡田 俊輔(日本M&Aセンターグループ)

株式会社日本PMIコンサルティング 岡田 俊輔

上場企業×非上場企業のM&Aにおいて、契約締結後に顧問先を変更するケースは多くあります。会計基準や期限が明確に定められており、四半期ごとの対応を求められるからです。本案件では、今の顧問先は継続する想定だと巴コーポレーションから事前にお話しを伺っていたため、そのために最適な業務体制やフローを構築することで会計PMIをご支援させていただきました。今後、益々のご発展をお祈り申し上げます。

※役職は取材時

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