人口減少による国内市場縮小の将来を見据えて初のM&Aでマレーシア進出を果たす

Bodibasixs Manufacturing Sdn. Bhd.&日進化学株式会社

譲渡企業情報

  • 社名:
    Bodibasixs Manufacturing Sdn. Bhd.(マレーシア)
  • 事業内容:
    シャンプー、ボディーケア、スキンケア、ヘアスタイリングなどのOEM製造

譲受企業情報

  • 社名:
    日進化学株式会社(大阪府)
  • 事業内容:
    エアゾールおよび液体化粧品の受託製造
  • 従業員数:
    420名(2025年10月時点)

1970年に創業した日進化学(大阪府)は、エアゾールおよび液体化粧品の受託製造(OEM)を行う会社です。国内の人口減少による将来的な市場縮小に対応するため、海外の売上比率を引き上げることを目指して、2023年11月にマレーシア企業Bodibasixs Manufacturing Sdn. Bhd.(以下、BSX 社)を譲り受けました。同社にとって初めてのM&Aでもあった本件について、髙田寛社長(写真右)に経緯を伺いました。(取材日:2025年10月30日)

クライアントの将来のニーズを見据え、人口増のASEANに照準

――はじめに、日進化学についてご紹介ください。

譲受企業 日進化学 代表取締役社長 髙田様: 当社は1970年に、私の父、髙田晴之が創業し、エアゾールおよび液体化粧品の受託製造を主として事業を展開してきました。私はケミカル系の会社で研鑽を積んだのち、1995年に日進化学に入社、2002年に代表取締役社長に就任しました。創立55期目となる2025年度の売上は約113億円で、ここ5年ほどは108億から116億円のあたりで推移しています。モットーである「確かな品質」を実現するため、特に認証の取得には力をいれており、ISOやOHSASなどを個別に取得していましたが、現在は品質、環境、労働安全衛生の3つのマネジメントシステムを独自に構築し、統合マネジメントシステムという形で運用しています。

――どのような製品を取り扱っているのでしょうか?

髙田様: エアゾール製品では化粧品、医薬部外品、家庭用品、工業用品などです。ヘアケアやスキンケア関連等では液体充填品の取り扱いもあります。最近では、OEMに加えて、内容物の処方を開発し、エビデンスを添えて商品提案をするODM事業へのスイッチも進めております。自社の製造工場を持たないファブレス企業が増えている現状に対応しています。

――M&Aを海外で検討した背景をお聞かせください。

髙田様: 当社が取り扱っている消費財は、売上が人口に比例します。日本国内では人口減少という大きな課題が迫っており、当社のクライアント企業は、シェア拡大のために海外に展開したいニーズを持っていました。現在は日本製品が人気のため輸出が増えていますが、いずれ海外でもコスト意識から「地産地消」に移行していくと予想しています。そうした場合の日系企業の受け皿となる企業を譲り受けたいと探していました。エリアについては人口ボーナス期にあるASEANに焦点をあてました

――そうした中で出合ったのがマレーシア企業のBSX社ですね。

髙田様: 2022年の夏頃、日本M&Aセンターからの提案の中にBSX社が含まれていました。それまでインドネシアやタイを中心にいくつかの企業を検討したものの、マイナー出資で進めていた交渉が決定寸前でブレイクするなど足踏みしていました。BSX社は当社同様、シャンプーやボディーケア、スキンケア、ヘアスタイリング剤などをOEM製造する会社です。30年の歴史があり、無借金で財務状況も良好、認証で外せないISO9001と22716を取得済みなど親和性の高さがありました。さらにハラル認証も取得済み。ASEANの4割以上を占めるムスリム市場への供給もスムーズだと考えました

金融機関と仲介会社と一丸となり交渉を進めることができた

――初めてのM&Aのお相手が海外企業ということですが、どのように進めたのでしょう?

髙田様: 事前調査は日本M&Aセンターにお願いしました。バリュエーションに関しては、EBITDA(償却前営業利益)を見たりはしていたものの、当時は新型コロナの影響があって参考にできるほどの数字ではなかったので、時価純資産にプラスアルファのラインで交渉を進めました。金融機関と日本M&Aセンターの担当者とともに一枚岩となってディスカッションしながら進められたことが良かったです。また、当社には金融機関出身の社員がいたので、細かな仕組みまで把握しながら交渉を進めることができました。

――BSX社側のオーナー陣の印象はいかがでしたか。

髙田様: 共同経営者のオーナーが3人いらっしゃいましたが、ご子息に承継する意思がなく、第三者譲渡を検討しておられました。訪日いただいて当社の工場をお見せした際、こちらに対するリスペクトが感じられて話しやすかったです。

――交渉はスムーズに進みましたか。

髙田様: 時間はかかりました。というのも、バリュエーションで、土地や建屋の金額に大きな差があったからです。最終的に、土地等も含めての金額交渉を経て合意に至りましたが、マレーシアリンギットの為替レートが急速に上昇していて、交渉が長引くほど時価純資産も上がることを考えるとスピーディーに決済したい思いはありました。デューデリジェンス(監査/DD)に関しては、法務DDと財務・税務DDを行い、ハイ・ミディアム・ローの3段階でリスク分類してもらいました。

部門ごとに分科会を設置。顧客の獲得やコスト削減に成果も

――2023年11月に譲り受けてから2年が経過しました。PMI(M&A後の統合プロセス)の状況について教えていただけますか?

髙田様: 決済したタイミングで現地を訪れPMIのカテゴリーを決めました。製造、R&D(研究開発)、新規開拓、経理、購買など部門ごとに進めることにして、各部門の分科会は今も交流して進めています。成果を感じているのはR&D部門で、当社の処方でBSX社の顧客を掴む流れが出始めています。BSX社の担当者が訪日して研修する機会も設けています。購買部門では、互いの購入金額を共有し、マレーシアでは高額な日本の原料をこちらで調達するといったところから徐々に進めています。

――現地の人材活用はどのようにされていますか。

髙田様: BSX社では、幹部候補生や部長級のマネージャークラス、日本でいう専務の立場の方など役員が残っていますので、継続して管理を行っていただいています。代表は、BSX社の前代表が引退する際に、海外経験豊富な商社出身の社員が引き継ぎました。他にも、技術部門の担当として、日本から1人派遣しています。

――マレーシアでの製品展開はいかがですか?

髙田様: マレーシアと近隣国に展開しているお客様から、日本の流行に沿った処方のリクエストが入り始めました。当社の処方をハラル原料に置き換えて処方を組み直す、といったニーズもあります。難点は、日本で製造した日本製品を海外へ発送すると、関税が価格を押し上げてしまうことです。「J-Beauty」と呼ばれる日本の美容関連の存在感が今も続いていて、高額でも購入する層も一定数存在しますが、ボリュームゾーンを取ろうとするならば、次のステップは地産地消だと考えています。

まずは業界を取り巻く課題の分析を。市場の目を海外にも向けるべき

――今後のビジョンをお聞かせください。

髙田様: まずは、現在の事業を軌道に乗せることが重要です。BSX社の売上は日本円で約35 〜36億円ほどですが、倍増を目指します。達成した後は、中東進出やインドを介した展開など、さまざまな方向が考えられます。また、ノンハラルを視野に入れることで、マレーシア国内の拡大や近隣諸国への進出も可能性があります。ただし、R&Dの拠点は日本に残したいと考えています。私たちの狙いは、日系企業を海外に進出させて契約を取りつけることです。日系企業が親となってコントロールすることで、お客様も言語面での融通が利き、信頼やメリットを得られると考えています。

――海外展開を目指す中堅・中小企業が押さえておくべきポイントはありますか。

髙田様: さまざまなパターンが考えられますが、企業の業種における環境悪化を分析する必要があります。当社の場合で言えば、取扱商品が消費財であるため、国内の人口減少が課題です。この課題に対して、人手が不足することを予測し、機械化やシステムの導入によって生産性の向上を目指します。ただ、それだけでは疲弊してしまうため、付加価値を創造する必要があります。当社ではR&Dに注力し、グローバル化を進めています。市場へ向ける目を、国内だけでなく海外にも広げるべきです。なぜなら、お客様である企業がすでに海外に目を向けているからです。当社は今、これらのポイントを押さえたところで、成功するかどうかはこれからです。

――M&Aを成功させるためのアドバイスをお願いします。

髙田様: リスクばかり取らず、身の丈にあった経営をしていくべきだと思います。そして何より重要なのは、人材の確保ですね。仕事ぶりや人柄がよく、信頼できる人材を集めることです。資金があっても人材がいなければM&A後に手詰まりを起こします。社長や経営層クラスが信頼を寄せられる人材を、しっかりと揃えておくべきだと思います。

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