新潟県内企業とのM&Aを重ね、グループ売上100億企業を目指す
譲受企業情報
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- 社名:
- 株式会社コシバ(新潟県)
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- 事業内容:
- マンション向け特注木製家具の製造
譲受企業情報
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- 社名:
- 株式会社ローテックホールディングス(新潟県)
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- 事業内容:
- 総合建設グループ
※情報はM&A実行当時
新潟県南魚沼市を拠点に、電気工事を祖業としてM&Aを通じた事業領域の拡大を進めてきたローテックホールディングス。現在は12社をグループにもち、地域インフラを支える総合建設グループとして成長を続けています。
一方、マンション向け特注木製家具の製造を手がけるコシバ(新潟県長岡市)は、創業から50年以上にわたり、誠実なものづくりで実績を積み重ねてきました。
後継者不在という課題を背景に、2025年6月、コシバはローテックグループに参画。現在は、採用面や事業面を中心に、早くもシナジーが生まれ始めています。
今回のM&Aによって両社はどのような成長と未来を描いているのか。ローテックホールディングスの関社長、コシバの小柴顧問、小野塚新社長に話を伺いました。(取材日:2026年3月3日)
M&Aの勉強を重ねるうち「会社の発展には最善の選択」と思うように
(左)株式会社コシバ 代表取締役 小野塚 徹 様
(中央)株式会社コシバ 顧問 小柴 利之 様
(右)株式会社ローテック 代表取締役 執行役員社長 関 聡 様
――両社の事業内容について教えてください。
譲渡企業 コシバ 小柴様:
新潟県長岡市で、主にマンション向けの特注木製家具を製造しています。父の代では婚礼タンスを手がけていましたが、取引先の倒産をきっかけに大きな事業転換を迫られ、マンション向け家具へとシフトしました。私が2代目として社長に就任したのは2002年です。それから20年以上、目の前の仕事一つひとつに誠実に向き合い、信頼と実績を積み重ねてきました。それが評判になり、徐々に仕事が広がっていきました。
弊社の強みは、単品製作から量産まで幅広く対応できる点です。過去には、約600世帯規模の大型マンション一棟分の家具を一括で手掛けた実績もあります。
譲受企業 ローテックホールディングス 関様: 弊社は、新潟県南魚沼市を拠点に、もともとは電気工事を主業としてきました。その後、M&Aを通じて建築、住宅、鉄鋼と事業領域を広げ、現在では地域のインフラを一貫して支えられる総合建設グループへと成長しています。地方では人材不足が深刻ですが、「新潟で100年先まで地域インフラを支える企業を残したい」という想いのもと、志を同じくする関連領域の企業と手を組み、現在は12社からなるグループを形成しています。
――どのようなきっかけでM&Aを考え始めたのでしょうか?
小柴様: 事業承継について真剣に考えるようになったのは、50歳を過ぎた頃からでした。最大の理由は後継者の不在でした。加えて、人材面の課題も大きく、単独では若手人材の採用が難しいうえに、入社しても十分に育成できないという不安がありました。このまま一社単独で経営を続けていても、将来的に会社が先細りしてしまうのではないかという思いが年々強くなっていきました。
銀行と4~5年前から相談を重ね、廃業、従業員承継、M&Aという選択肢を検討する中で、「会社をより発展させるにはM&Aが最善だ」と考えるようになりました。あっという間に歳を取ってしまいますし、できるだけ早く実行して、時間をかけて引き継ぎを行いたいとも思っていました。
ただ当初は、M&Aに対して明るいイメージは持っておらず、正直「騙されるかもしれない」という不安もありました。不安を払拭するために自分でも勉強を重ね、60歳のタイミングで覚悟を決め、具体的にお相手探しをスタートしました。条件としては、一定の規模があり、成長性のある会社に託したいと考えていました。
関様: 31歳で社長に就任した当初は、借入の返済と会社の立て直しに必死でした。その後経営が安定してきた頃から、「何のために経営するのか」「会社をどこへ向かわせるのか」を改めて考えるようになりました。そこで見えてきたのが、後継者不足、採用難、人材不足といった、地方の建設企業が共通して抱える課題です。これらは一社単独では解決が難しい課題です。地域のインフラを支え続けるためには、志の近い企業が連携し、中堅規模へ成長していく必要があると考えるようになりました。経営戦略としてM&Aを明確に意識し始めたのは、約7年前からです。
相手企業を見る際に重視しているのは、トップの考え方と人柄で、社長の姿勢や社員教育、会社の文化を大切にしています。また、M&Aを単なる事業承継の手段ではなく、「100年後も地域に必要とされる企業を残すための成長戦略」と捉え、その考えに共感していただけるかを重要視しています。
現場を見た瞬間に「この会社となら一緒に歩んでいける」と確信
――トップ面談の際の印象や決め手について教えてください。
小柴様: 日本M&Aセンターからご紹介いただいた段階で、建設関連分野でしっかりと成長を目指している企業だと聞いており、良い相手だという印象を持っていました。実際にお会いしてみると、関社長の雰囲気や表情から「この方は信頼できる」と強く感じました。率直に言えば、一目ぼれのような感覚でした。
特に印象に残っているのは、「地域で100年続く企業をつくる」という考え方です。私自身も会社を次の世代につなぎたいという想いでM&Aを選びましたので、その考え方には強く共感しました。この会社と一緒なら、事業をしっかり守り、さらに発展させていけると確信しました。
関様: お会いした瞬間に、小柴社長のお人柄の良さが伝わってきました。さらに、工場を見学した際、社員の皆さんが足を止めて挨拶をしてくださったことも印象的でした。そうした場面にこそ、会社の文化や日頃の教育が表れるものです。現場を見た瞬間に、「この会社なら間違いない。一緒に歩んでいける」と感じました。
また、家具製造という事業領域そのものも魅力でした。建設業において家具は切り離せない要素ですが、専門的に、かつ柔軟に対応できる企業は多くありません。事業面での将来性に加え、小柴社長と現場の双方に魅力を感じたことが決め手となりました。
資産である文化を守りながら、組織化に向けた仕組みづくりを推進
――2005年6月の成約後、ローテックの小野塚徹副社長がコシバの社長に就任されました。PMI(M&A後の統合プロセス)にどのように取り組んでいますか?
小野塚様: 小柴社長には顧問として引き続き関わっていただき、技術の継承や現場教育を担っていただいています。一方で私は、これまでグループ運営で培ってきた組織化のノウハウを持ち込み、再現性のある仕組みづくりや経営基盤の整備を進めています。
ただし、小柴社長が社員の皆さんと丁寧に関わって築いてこられた社風や、50年以上かけて育まれた文化は大きな資産です。そのため、新しい仕組みを導入する際も、これまでの仕事の進め方や生活のリズムを崩してしまわないかを慎重に見極めながら進めています。今はまず守りを固め、社員の皆さんが安心して働ける環境を整えることを最優先に考えています。
――小柴顧問は、M&A後の変化や効果をどのように感じていますか?
小柴様: これまでは、私が一人ひとりに指示を出して工場を運営してきましたが、M&A後は、縦の指示系統が出来上がりました。工場長から伝達が下りていく、再現性のある組織へと変わり始めたことで、工場長や副工場長の意識も変わり、責任感や主体性が出てきたのがわかります。社員同士で細かな打ち合わせを行う姿も増え、社内の横のつながりも生まれています。
また、長年の課題であった採用面では、すでに3名の採用が決まり、グループに加わったことの効果を強く実感しています。営業面でもビジネスホテルの新規案件を受注するなど、早くも統合によるシナジーが形になりつつあり、組織として着実に成長していると感じています。
――日本M&Aセンターのサービスについてはいかがでしたか?
小柴様: 何よりも、良い相手先とつないでいただいたことに感謝しています。進行中もこまめに連絡をいただき、安心して進めることができました。成約後も継続してフォローしていただいており、感謝しています。
関様: M&Aでは、財務情報や過去の実績についての認識のずれがあると、後々大きなトラブルにつながります。その点、日本M&Aセンターの担当コンサルタントには必要な情報を的確に整理していただき、こちらの要望にも迅速に対応していただきました。また、数値だけでなく、相手企業の雰囲気や社長のお人柄についても丁寧に共有していただけたことは、大きな安心材料でした。その仕事ぶりから学ぶ点も多く、非常に勉強になりました。
譲渡しても会社への想いや熱意、居場所はなくならない
――今後のビジョン、目標についてお聞かせください。
関様: グループとしては、現在約35億円の売上規模から、2030年に50億円、2040年には100億円へと成長することを目標に掲げています。中小企業から中堅企業へと発展させることで、100年先まで持続可能な地域のインフラを支える企業をつくりたいと考えています。
一方で、これまでの経験を通して、売上拡大だけを目的にM&Aを重ねてもうまくいかないことを学びました。会社が長年築いてきた文化を大切にして、敬意と思いやりをもった経営をすることが重要です。経営者同士が信頼し絆を深めることが、社員同士の絆へとつながり、そこからシナジーが生まれる。その結果として、売上や利益がついてくるものだと考えています。
小柴様: コシバ単体としては、現在の売上約3億円規模から、将来的には4億円、5億円規模への成長を目指していきます。攻めの営業活動にも少しずつ取り組み始めています。グループとしてのボリュームを生かして新たな案件へとつなげていくことで、社員の待遇改善はもちろん、ひいては家具製造業界全体の社会的地位の向上へとつなげていきたいと思っています。
――最後に小柴顧問から、M&Aを検討する経営者へメッセージをお願いします。
小柴様: 会社を存続させるにはどうすればよいのか、従業員の雇用を守るにはどうすればよいのかと悩んでおられる経営者の方には、ぜひM&Aを選択肢の一つとして検討してほしいと伝えたいです。
代表を退いたからといって、会社への想いや仕事への熱意、自分の居場所がなくなるわけではありません。私自身も今、顧問という新たな立場で関わり続けながら、会社が成長していく姿を見守ることができています。信頼できる相手と出会えれば、M&Aは会社にとっても経営者にとっても、非常に価値のある選択肢になります。ぜひ、前向きに検討していただければと思います。