強いブランドの“伸びしろ”を伴走で広げる。ファンドのプロが経営とマーケティングを後押し

株式会社アートワークスタジオ(兵庫県)

譲受企業情報

  • 社名:
    株式会社アートワークスタジオ(兵庫県)
  • 事業内容:
    オリジナル照明・インテリアの企画販売
  • 売上高:
    10数億円
  • 従業員数:
    32名(社員24名、アルバイト8名)

譲受企業情報

  • 社名:
    アント・キャピタル・パートナーズ株式会社が運営するファンド(東京都)
  • 事業内容:
    未上場株式等への投資
  • 売上高:
    非公開
  • 従業員数:
    49名

※情報はM&A実行当時

※本記事は、2026年3月末発行の日本M&Aセンター広報誌「MAVITA」VOL.7からの転載です。

「MAVITA」へのご感想をお寄せください。アンケートにご回答いただいた方の中から抽選でご希望の商品をプレゼントいたします。(応募締切:2026年6月30日まで)

照明器具を企画販売するアートワークスタジオは、高いデザイン性が人気で1997年の創業以来ファンを増やし続けています。そんな同社は2022年にM&Aでファンドと手を組みました。以降、ファンドが伴走しブランド力をさらに磨いた結果、3年で売上を1.5倍、EC直販は3倍にまで伸ばしています。同社を譲り受けたファンド側の担当者に、経緯と実態を聞きました。

圧倒的な意匠と機能美。持続的成長のためM&Aを選択

写真:譲受企業 アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 安藤 慶さん(アートワークスタジオの社外取締役として企業価値向上に注力。公認会計士)

写真:譲受企業 アント・キャピタル・パートナーズ株式会社 安藤 慶さん
(アートワークスタジオの社外取締役として企業価値向上に注力。公認会計士)

「ため息が出るほどカッコいいです」
「高い買い物でしたが買って良かった」

ECサイトに購入者からの賛辞が並ぶアートワークスタジオ。1997年に神戸で誕生した照明器具メーカーです。
人気の理由はデザイン性の高さと機能性の両立、そしてそれを実現する確かなものづくりのバランスに尽きます。

ロングセラーのシーリングライト「Glow(グロー)」はその最たるもの。モダンな意匠の美しさはネジなどの工業部品を見えない仕上げが下支え。天井照明ながらも間接照明にもなる機能美も併せ持ちます。

こうしたオリジナル商品群を直営店舗とEC、そして卸経由で販売。着実にファンを増やしてきた同社ですが、デザイナー兼創業者の金野達夫氏は2021年にM&Aでの譲渡を決断します。

なぜか?創業以来25年間、先頭で走ってきた金野氏は将来の承継を考える時期に差し掛かっていましたが、親族承継の可能性は難しいと判断。将来的に社内で代表を継ぐ人材が現れる選択肢を残しつつ、多くのファンを持つブランド力を持続し発展させるため、成長支援をしてくれる新たなパートナーを求めていました。

「アートワークスタジオ」の商品群。モダンで機能的な照明器具は、感度の高いユーザーに支持されている

「アートワークスタジオ」の商品群。モダンで機能的な照明器具は、感度の高いユーザーに支持されている

事業にこだわらない“無色透明”である強み

メインバンク経由で日本M&Aセンターに相談し、譲渡先として選んだのが独立系投資ファンドのアント・キャピタル・パートナーズでした。
同社は国内の中堅・中小企業の支援を得意とし、メンバーが経営に寄り添いながら、企業価値を高めるスタイルを信条としています。アント・キャピタル・パートナーズのパートナーで、アートワークスタジオ社外取締役でもある安藤慶氏は「アートワークスタジオもそうですが、当社がお手伝いするのは、従業員規模が数十名の企業が多く、大企業と比べて一人ひとりの役割の大きさも大切さも違います。上から経営を押しつける手法はとるはずがありません」と言います。

「身構えられることもありますが、もとよりファンドは恐ろしい存在ではありません(笑)。むしろ多くの事業会社と比べて、既存事業とのシナジーなどのこだわりがないファンドの“無色透明さ”は強みです。フラットにその企業の事業やビジネスモデルをみて、最適な判断をしていただくことを重視しています。だからこそ、幅広い事業の成長をお手伝いしてきた実績もあります」

アートワークスタジオ・オーナーの金野氏もそうした姿勢と実績から、譲渡先にアント・キャピタル・パートナーズを選択。安藤氏の上席として、ともにアートワークスタジオの社外取締役をつとめる田辺憲正氏が金野氏と同じ趣味をもつなど、ライフスタイルや価値観が共感できたことも大きかったようです。

もちろんアント・キャピタル・パートナーズから見てもアートワークスタジオは魅力的でした。ECサイトではユーザーからの絶賛の声が数千も並び、プロダクトの良さは折り紙つき。売上は10数億円、うちECでの売上は3億円程度で「まだ伸びしろが大きく、お手伝いできることがたくさんある」と確信できました。

「オーナー様が離れても持続できる組織にしたい」今回のみならず、そんなご依頼はとても多いです

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ファイナンスのフォローと円安への素早い対応

2022年9月、金野氏が所有していた株式はアント・キャピタル・パートナーズに譲渡。もっとも、当初、金野氏はそのまま社長職にとどまりました。そこにアント・キャピタル・パートナーズから田辺氏、安藤氏が取締役として入ったわけです。

まずは得意領域のファイナンス・資金管理業務を引き受けました。複数あった取引先金融機関を整理し、メインバンクを一本化。デザイナーながら資金まわりをすべて見ていた金野氏の負担を軽減し、事業に集中できる体制をつくりました。

同時に進めたのが「値上げ」です。背景にあったのは譲渡直後の急激な円安。海外での製造コストが急激に高くなり、価格を据え置きしていては利益が前年割れする可能性が高かったからです。「我々が現実的な利益率を試算しつつ議論できたことで、ムリなくすばやく実行できた。結果、翌年度の売上は、ほぼ横ばいながら、利益は若干上がった。価格改定を理解してもらえる質の高い製品をつくり続けてきたアートワークスタジオだからこそ、スピーディに実行できたものです」

そして2023年3月からは、プロ経営者の荒西俊和氏を招聘し、代表取締役CEOに就任。金野氏は取締役会長となり、成長戦略のギアを上げました。
「社内にはナンバー2、ナンバー3といえる優秀な社員もいらっしゃいますが、中から伴走して経営を進めつつ、経営メンバーの一員として会社経営を身を持って経験いただきながら、徐々にチームで経営していく体制に移行していくことが、将来の会社の存続と発展に資すると考えています」
そして就任後、EC強化を中心とするマーケティング領域に実績のある荒西氏が推進した施策が、同社を次のフェーズへと導きます。

集客とブランド力をSNSで高めるマーケティングに注力

「インスタを見て来ました」
東京・岩本町にある直営のショールームに来店するお客様にヒアリングし、「どこで知ったのか」を聞くと、圧倒的にインスタグラムだと実感。そこで、インスタグラムを使ったマーケティングに力を入れることに。

「それまでもアカウントはありましたが、月数回投稿する程度でした。この頻度を倍以上に上げ、さらにテーマを設けて運用するようにしたのです」
ひとつだったアカウントを2つに分散。ブランド力の向上を目指す「デザインの良さと世界観を伝える」アカウントと、商品の使い方や使用シーン・事例を解説する「ハウトゥもの」のアカウントに分けました。
従来はこれらを分け隔てなく投稿していましたが、これを切り離すことで、異なる2つのテーマが強調されて伝わりはじめたのです。
「効果はすぐに表れました。投稿するごとにフォローと『いいね!』が増加。流入するホームページとECサイトもより洗練されたものにリニューアル。徐々に予算をつけて、広告費をかけて投稿を磨く。そうした具合に、少しずつデジタル上でのお客様とのコミュニケーションを積み上げていきました」

インスタグラムのフォロワー数は1万人未満だったのが25万人超に。インプレッション数も月1万未満だったのが、100倍以上にまで大きく増加しました。
こうしてもともとの強みだった“良いモノ”がより多くの人に知られるように

並行してそれまで金野氏がすべて手掛けていたプロダクトデザインを、少しずつ別スタッフも手掛けるようにし、実際にヒット商品も生まれてきました。
3年目の2025年には、売上が約1.5倍の20億円を超えるまでに伸長。EC率も高まり、うち10億円強がECによる売上になっています。

「売り方や見せ方を改善して売上・利益を伸ばすステージは一定の段階に到達し、いまはまた次のステージ、次の成長領域に向け、荒西社長や幹部メンバーを中心に走りながら、我々も伴走させていただいています」
次は10を50に、50を100に。実現すれば、アートワークスタジオの灯りは次の四半世紀も輝き続けるでしょう。

秋葉原駅から徒歩10分ほどの東京ショールーム。ECの他、全国のインテリアショップにも卸している

秋葉原駅から徒歩10分ほどの東京ショールーム。ECの他、全国のインテリアショップにも卸している

写真:富本 真之 文:箱田 高樹

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