事業会社への譲渡・売却に関する事例紹介

異業種との資本提携でイノベーションを起こす

異業種との資本提携でイノベーションを起こす

譲渡企業: 株式会社駿河サービス工業

所在地
静岡県
事業内容
産業廃棄物処理業
売上高
約16億円(2019年1月期)
代表
久保田 勇輝 氏
従業員数
正社員61名 パート4名(2019年2月時点)※情報は全てM&A直前のデータ

譲受企業: 特種東海製紙株式会社

所在地
静岡県
事業内容
紙類の製造・加工・販売
売上高
約791億円(2018年3月期)
代表
松田 裕司 氏
従業員数
1,456名(2018年3月期)※情報は全てM&A直前のデータ

M&A実行の背景

静岡県御殿場市で総合リサイクル事業を展開する株式会社駿河サービス工業は1983年に創業。順調に業績を伸ばす中、三代目にあたる久保田勇輝社長(当時)は会社の先行きに不安を感じていた。

さらなる業績向上には中間処理施設の新設など大胆な投資が必要である。しかし許認可という産業廃棄物処理業界特有の事情により新たなエリアでの施設開設は容易ではない。また、既存施設のオペレーション改善による稼働率向上には限界があった。

そんな中、自社が買収した湖南商事がグループ傘下で高収益企業へ生まれ変わったことをきっかけに、久保田社長は「今度は自分たちが大手企業グループに入って、新たな可能性を探ったほうがいいのではないか」と「成長戦略型M&A」を模索し始める。

候補企業探しを進める中、筆頭に挙がったのが特種東海製紙。
同社は静岡県内を拠点とし、特殊紙の開発で連結売上約800億円を誇る東証一部企業であるが、人口減やペーパーレス化の影響を受けて市場は頭打ちの状態にあり、製紙業以外の展開を模索していた。同社は廃プラスチックや紙くずを原料とする固形燃料RPFを製造する子会社を保有していたことから、新事業として環境事業やリサイクル事業に着目していた。そのため総合リサイクル事業の駿河サービス工業は自社の構想に合致する相手だった。

一方の駿河サービス工業は、大手と組むことでリサイクル材の安定した供給先が確保できれば、より大量の廃棄物を取り扱うことができること。新事業に積極的な投資を検討する特種東海製紙によって設備投資の課題をクリアできること。そして特種東海製紙の研究開発力を用いた新たなリサイクル品の独自開発、新規市場創出への期待が見込めること。これらはシナジーが見込める異業種の大手を相手に探していた駿河サービス工業にとっても製紙業を本業とする特種東海製紙は理想的なパートナーに映った。

こうして互いに統合後のシナジーが描けたことで資本提携にむけて話が具体的に進み、2020年1月に会社分割を経て株式譲渡が行われた。

M&A実行後の成果

M&A完了後、久保田社長は新社長への引継ぎを行うため顧問として駿河サービス工業に残る。
新社長には特種東海製紙の工場長をしていた人物が就任。ものづくりのエキスパートとはいえ、紙をつくるのと産業廃棄物をリサイクルするのとでは勝手が違い、当社は業界の違いに戸惑うことも多かったという。

新社長の負担を減らすために前社長が関与の度合いを強める選択肢もあるが、久保田社長は移行期間に過去の経営陣が残ることで新経営陣の意向を邪魔するのは避けたい、そして市場の変化スピードに乗り遅れないためにも迅速にバトンタッチしたいと判断し、予定を早め数カ月で顧問を退任。新社長に経営を一元化した。

特種東海製紙も新社長を着任させるだけでなく資源再活用本部スタッフが頻繁に駿河サービス工業を訪問するなど、積極的に新社長を支えた。それらが功を奏し、新社長は現場に馴染み始め、社員や取引先から信頼を得るようになり、M&Aから1年後シナジーが現れ始めている。

まず営業面では、特種東海製紙のネットワークを最大限活用して取引先を拡大。当初の狙いどおり、特種東海製紙やレックスなどのグループ会社、さらにはグループ外の顧客との取引も徐々に増やしている。また、労務環境が上場会社基準になって社員が働きやすくなるなど管理面も向上。
設備のメンテナンスや能率向上に投資できるようになり、生産性のさらなる向上が期待される。

そして新しいリサイクル品の研究開発には目下取り組み中であり、両社のコラボレーションによる新たな市場の開拓、飛躍的な成長に大きな期待が寄せられている。

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