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タイ
M&Aのポイント

2026年最新日本企業が知っておきたい市場環境と特徴

ASEANで日系企業が最も多く進出する国、タイ。
約6,000社を超える日本企業が活動し、
成熟したサプライチェーンを起点に、
発展を遂げてきた一大日系経済圏が、
M&Aを通じた事業拡大を力強く後押しします。

ビジネス環境

ASEANの中心で築かれた日系経済圏

  • 進出日系企業数
    ※ASEAN最大規模

    6,000

  • タイ在住日本人数
    ※2024年10月時点

    7万人

  • ASEAN自動車生産台数
    ※2024年

    No.1

  • 主要都市別名目GDP
    ※バンコク

    3

タイは東南アジアの地理的中心に位置し、ASEAN全域へのアクセスが容易です。 「アジアのデトロイト」と称されるほど自動車産業が発展しており、 日本の総合商社・自動車メーカーが歴史的に形成してきた一大日系経済圏がM&Aの土台となっています。

出典:
日本貿易振興機構(JETRO)「タイ日系企業進出動向調査2024年度」(2025年2月公表)
外務省「海外在留邦人数調査統計」(2024年10月1日時点)
ASEAN自動車連盟「ASEAN自動車統計」(2024年12月時点)
各国統計機関データを基に作成した都市圏GDPランキング(List of metropolitan areas by GDP参照)

日本企業が事業を進めやすい理由

  • Reason 1

    日本文化の高い浸透度

    日本語対応の病院・学校・スーパーが揃うため、駐在員の生活コストと心理的障壁が低いです。また、日系企業での勤務経験者や日系企業との取引実績のある現地企業が多いことから、日本式経営への高い理解度と信頼性がある環境です。

  • Reason 2

    製造・販売の強い地盤

    進出日系企業の約4割を製造業が占めており、金属製造・加工や輸送用機械、一般機械などを中心に、厚い産業集積とサプライチェーンが形成されています。また、卸売・小売業やサービス業の進出も進んでいます。

  • Reason 3

    魅力的な消費市場

    人口約7,000万人を擁し、都市部を中心に幅広い消費市場が形成されています。中間所得層の拡大や所得水準の向上を背景に、消費市場としての魅力も高まっています。また、タイでの事業基盤を起点に、ASEAN域内への展開を目指すことも可能です。

出典:日本貿易振興機構(JETRO)「タイ日系企業進出動向調査2024年度」(2025年2月)

タイM&Aのポイント

  • Point 1

    人材確保

    タイでは、日系企業での勤務経験を持つ人材の層が厚く、日本企業の業務慣行や文化への理解を持つ人材を確保しやすい環境があります。資本提携後の事業継続や組織運営を円滑に進めやすいことも特徴です。

  • Point 2

    日本企業との親和性

    タイでは長年にわたり多くの日系企業が事業を展開しており、日本企業や日本製品・サービスに対する認知や信頼が蓄積されています。こうした事業基盤や既存の取引関係を活かすことで、資本提携後の事業連携や統合プロセスを進めやすい環境があります。

  • Point 3

    企業価値向上の余地

    日本企業が蓄積してきた経営管理や生産管理、生産性向上などのノウハウを活かし、譲受後の業務効率化や事業基盤の強化に取り組める余地があります。双方の強みを組み合わせることで、中長期的な企業価値向上を目指すことができます。

  • Point 4

    外資規制・投資優遇制度

    タイでは、業種によって外国人事業法等に基づく外資規制が適用されるため、出資比率や事業内容に応じた事前確認が重要です。一方、タイ投資委員会(BOI)の認可対象となる事業では、一定の要件のもと、外資規制の緩和や法人税免除などの投資恩典を受けられる場合があります。M&Aにあたっては、専門家と連携しながら適切なストラクチャーを検討することが重要です。

タイM&Aの事例

オキツモ株式会社とBu Chemical Industry社の資本業務提携

耐熱塗料国内シェア50%超のグローバルニッチトップ企業が、
初めてタイ企業とのM&Aを選択した理由

耐熱塗料で国内シェア50%超を誇るオキツモ。海外のネットワークや知見が豊富な同社が、初めてタイの現地企業を譲受けた経緯を伺いました。

譲受企業情報
社名 オキツモ株式会社(三重県)
事業内容 耐熱塗料、フッ素樹脂塗料ならびに機能性コーティング剤の製造販売
売上高 約35.7億円(単体・2021年12月期)
従業員数 128名(単体・2021年12月期)
譲渡企業情報
社名 Bu Chemical Industry Co., Ltd.(タイ)
事業内容 産業用塗料の製造
売上高 約4.3億円(2021年12月期)
従業員数 53名(2021年12月期)

※M&A実行当時の情報

耐熱塗料で国内シェア50%超を誇るニッチトップ企業のオキツモ(三重県名張市)。1990年代から積極的に海外進出、現地生産を進め、現在ではアメリカ、ブラジル、インド、スペイン、中国、タイの6カ国に駐在所を持つグローバル企業です。海外でのネットワークや知見も豊富にある同社ですが、今回、初めてM&Aでタイの現地企業を譲り受けました。

大手企業が参入しづらいニッチな領域で勝負し耐熱塗料で国内シェア50%超

耐熱塗料を製造・販売するオキツモ。塗料とひとくちに言っても用途によってたくさん種類があります。同社が得意とするのは、耐熱や放熱、環境配慮といった熱に関する機能をもたせた塗料の開発です。

オキツモは1957年に日本で初めてシリコーン樹脂をベースとする耐熱塗料の量産化に成功しました。「おきつも」と名付けたその塗料は暖房機器やキッチン用品などの日用品から自動車のマフラーやロケットまで幅広く使われ、以来、耐熱という特徴に顧客のニーズを合わせて付加価値をつけた塗料を開発、販売してきました。今では耐熱塗料で国内シェア50%超を誇ります。年商72.9億円(連結・2021年12月期)、従業員315名(グループ会社4社含む)、海外に拠点を6つもつグローバルニッチトップ企業です。

オキツモ株式会社 本社(三重県名張市)
オキツモ株式会社 本社(三重県名張市)

1945年に大亜精工株式会社を設立し(1947年、三重油脂化工株式会社に改称、1987年に現在の社名に)、現在は創業者の孫である山中重治様が社長を務めます。オキツモの強みを山中社長はこう話します。

「自動車のボディや建物の外装といった一般的な塗料は大手企業が市場を独占しています。特に私が入社した1980年代当時は、市販の塗料を購入するのが一般的でした。そこで、顧客と共同開発して商品を生み出すことにしたんです。少量多品種ですので大手は参入しにくい。このやり方を『メニューのない居酒屋のようだ』と評されたこともあります」

現在はグループ従業員の約30%が技術開発に従事し、海外の拠点も含め開発した新しい技術や発想・情報を共有することで、さらなる新商品開発につながるグローバル技術体制を構築しています。ちなみに社名の『オキツモ』は万葉集に詠まれた名張の枕詞『沖津藻』に由来します。『最先端のテクノロジーを追求しつつも、美しい自然を愛した万葉人の素朴で豊かな心を忘れない企業人でありたい』との願いが込められているそうです」

コロナ禍で新規事業の動きがストップ。脱炭素を見据え新たな成長の柱が必要に

オキツモが最初の進出先としてアメリカに営業拠点を設けたのは1994年。この頃から日本企業の海外展開や生産拠点の海外移転が本格化し、その流れに追随するように2年後の1996年にはタイに生産拠点を作りました。その時に陣頭指揮を執ったのが、当時30歳で営業部に在籍していた山中社長でした。

「タイに赴任したときはまだ入社して数年でした。工場や技術のこと、まして経営のことなどわからない状態で飛び込んだ上に、通貨危機が起きて操業前にあてにしていたタイ国内の日系企業からの発注がほとんど期待できなくなってしまったんです。それでも工場を作るための費用は発生します。毎週の支払いを工面するのに非常に苦労しました」

タイの現地拠点
タイの現地拠点。耐熱塗料や潤滑塗料の塗装加工のほか、顧客のニーズに合わせた「塗料の開発」や「塗料のチューニング」も行う

困難を乗り越えて25年あまりが経ち、現在タイの拠点は順調に操業しているにもかかわらず、今回、オキツモはM&Aで現地企業を譲り受けました。その決断の背景にあったのがここ数年のコロナ禍です。

「タイの拠点は順調に利益を出してはいますが、主力商品はオートバイのマフラーの塗料で約7割を占めています。売り先もほとんどが日系のオートバイメーカーです。今は成長産業ですが、脱炭素に向けた動きなども考えるとどこかで頭打ちになる。それを見越して新たな事業創出に向けた動きも進めていたのですが、コロナ禍ですべてストップしてしまいました。そんなときに知ったのがBu社でした」

Bu社はタイでガスボンベの塗料を製造・販売する会社で、後継者不在を理由に譲渡先を探していました。ニッチな領域のため利益率も10%と高く業績もいい。何より現地のローカル企業を顧客に持っている点が魅力でした。

「日系企業は日本にいるときからの関係性がありますが、現地のローカル企業はそうした関係性が一切ありませんから価格勝負になってしまうんです。当社は顧客の要望に合わせた商品開発をしていますから、それでは強みを発揮できません。譲り受けることによって新たに事業領域を広げ、現地取引先の獲得もできると思いました」

こうしてオキツモとBu社は資本業務提携を結びました。

譲受け企業に当社の技術やノウハウを融合することで両社ともに成長できる

オキツモにとって今回が初めてのM&Aでしたが、これまでに2度、海外企業とのM&Aを検討して、成約までにいたらなかった経験を持ちます。いずれも直接交渉でしたが、「思わぬ問題がいろいろ出てきた」と山中社長は苦笑します。

「例えばこんなことが起きました。その会社とはDD(デューデリジェンス、買収監査)まで話が進んだのですが、そこでいろいろと問題が出てきました。従業員と給料未払いで揉めていたり、土地の契約更新で揉めていたり……。そもそも赤字の会社だったこともあって買収価額もつけられない。それでも当事者間で進めないといけませんから、まったく折り合いがつきませんでした。
その点、今回は非常に順調でした。相手企業の業績が良かったこともありますが、企業評価をしっかりした上で提示された金額でしたから買収価額の判断はしやすかったです。コロナ禍でなかなか現地に行って直接お話しすることはできませんでしたが、そこも日本M&Aセンター担当者が動いてくださったのでストレスなく検討を進めることができました」

成約して数カ月がたち、現在は前オーナーからの引き継ぎの真っ最中だというオキツモですが、状況を尋ねるとものづくりの会社ならではの苦労を話してくれました。

「予想はしていましたが、塗料の配合レシピがすべて前オーナーの頭の中にしかないんです。秘密保持の観点もあるのでしょうが、データとして蓄積されていない。それなので、今は前オーナーにヒアリングしながらレシピを記録する『見える化』の作業をしています」

オキツモでは、特にASEANを中心に今後も積極的にM&Aを活用して事業の領域を広げていこうと考えています。そういう意味において、今回のM&Aは「試金石になった」と山中社長は話します。

「例えば燃料を使った自動車がなくなったら、当社の取引の3分の1が消失してしまいます。そしてそれは、それほど遠い未来の話ではないでしょう。M&Aで譲り受けた会社に当社の技術やノウハウを融合することで、新しい事業や顧客を生み出し両社ともに事業を発展させていくことができると考えています」

担当コンサルタント(オキツモ株式会社様担当)

コロナ禍ということで案件を進める難しさや、クロスボーダーならではの壁はありましたが、スピード感を持った意思決定と真摯に譲渡企業と向き合うオキツモの皆様のおかげで、友好的に進めることができました。今後も積極的に海外展開をされると伺っておりますが、本件がオキツモ株式会社様の発展に寄与することを心より願っております。

※役職は取材時

現地法人によるサポート体制

タイ現地法人のメンバー

日本M&Aセンターはタイに現地法人を設置し、現地の商習慣や制度を踏まえたM&Aを支援しています。
日系企業の進出が進むタイ市場で、現地ネットワークを活かしたM&A支援を行っています。

Nihon M&A Center (Thailand) Co., Ltd. Director 木川 貴之亮

Nihon M&A Center (Thailand) Co., Ltd. Director
木川 貴之亮

ASEANで日本企業の進出が進んでいる国であり、非常に親日的なタイ。M&Aでともに成長するために、日本企業の技術力も大いに生かせる市場です。すでに進出済みの企業にとっても、ローカル販路の獲得による成長余地が大きく残されています。駐在歴とタイ語も活かし、現地メンバーとともに、皆様のタイ進出・事業拡大をご支援いたします。

548 One City Centre Building 19th floor, Unit 1904, Ploenchit Road, Lumpini Pathumwan Bangkok 10330 Thailand TEL:+66-2251-4651(日本語・英語・タイ語対応)

タイ現地法人 アクセスマップ

Nihon M&A Center (Thailand) Co., Ltd.

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よくある質問

  • 回答

    タイ企業の株式を100%外国資本で取得できるかは、対象会社の業種や許認可によって異なります。

    外国人事業法(FBA)では、外国人または外国企業が資本の50%以上を保有するタイ法人は「外国人」として扱われ、一定の業種では参入制限や許可が必要です。一方、FBAの規制対象外となる業種や、タイ投資委員会(BOI)の投資奨励対象事業などでは、100%外国資本が認められる場合があります。 なお、タイの非公開会社では原則として2名以上の株主が必要です。そのため、外国資本全体で100%保有することは可能でも、日本企業1社のみを株主とする単独保有はできません。

  • 回答

    外国人事業許可(FBL)は、外国企業が外資規制の対象事業を行うために必要となる許可です。一方、BOI認可は、タイ政府が一定の事業への投資を促進するために付与する優遇制度です。

    外国人事業法(FBA)は制限事業を第1種から第3種に分類しており、外国企業が対象事業を行う場合は、その区分に応じて参入制限や許可などが適用されます。業種によっては、外国人事業許可(FBL)の取得が必要です。 一方、BOI認可を受けた対象事業では、法人税の免除などの投資恩典を受けられる場合があります。また、認可された事業について外国人事業証明書(FBC)を取得することで、外資規制に対応できる場合があります。M&Aでは、BOI認可企業の株主変更後も、認可条件や投資恩典を維持できるか確認することが重要です。

  • 回答

    外国人事業法への適合性、BOI認可、土地保有資格、事業ライセンス、税務、労務、株主構成などを重点的に確認します。

    特に、買収によって外国資本比率が50%以上となり、対象会社が外国人事業法(FBA)上の「外国人」に該当することで、従来行っていた事業に新たな規制や許可が必要にならないかを確認することが重要です。 また、名義上のタイ人株主を利用して外資規制を回避する、いわゆるノミニー構造は禁止されているため、株主構成、出資資金の出所、議決権、経営の実態も確認する必要があります。BOI認可や各種ライセンスについても、買収後の承継可否、株主変更の届出、認可条件を維持するための手続きを事前に確認します。

ご利用にあたって

  • 本FAQは、2026年7月時点の一般的な制度およびM&A実務に基づく参考情報です。
  • 実際に必要となる許認可、届出、税務、手続きは、対象会社の業種・所在地・株主構成・取引金額・取得比率などによって異なります。
  • 個別案件については、現地の弁護士・会計士・税務専門家などと連携し、最新情報を確認しながら進めることが重要です。