PBR(株価純資産倍率)とは?PERとの違い、目安などわかりやすく解説
⽬次
- 1. PBR(株価純資産倍率)とは
- 1-1. PERとの違い
- 2. PBR(株価純資産倍率)の目安とは
- 3. 低PBR対策を東証が要請する背景
- 4. PBR(株価純資産倍率)の算出例
- 5. PBR(株価純資産倍率)を見る際のポイント
- 5-1. PBR単独での判断は避ける
- 5-2. 同業種比較をする
- 5-3. 時系列で変化を追う
- 5-4. 計算に用いられるのは帳簿上の数値である
- 6. 終わりに
- 6-1. 著者
東京証券取引所はプライム、スタンダード市場に上場する企業約3,300社に対し、2023年3月、資本コストや株価を意識した経営の実現を要請する通知文を出しました。その中で、特にPBRが長期にわたり1倍を下回る企業に対し改善策が強く要請されており、企業による対策の開示も進んでいます。本記事では、PBRの概要についてご紹介します。
PBR(株価純資産倍率)とは
PBR(Price Book-value Ratio:株価純資産倍率)は、企業の株価と純資産の比率を示す指標です。PBRは株価が割安か割高か、企業評価や投資判断の目安として用いられます。PBRは株価をBPS(1株当たり純資産)で割って求めます。
PBRの計算式に出てくるBPS(1株当たり純資産)は、株価が直前の本決算期末の「1株当たり純資産」の何倍になっているか、を示す指標です。純資産を発行済株式総数で割って求めます。
BPS(1株当たり純資産)=株価÷発行済株式総数
BPS(1株当たり純資産)の数値が高いほど、企業の安定性も高いと評価され、前述の通り株価をBPSで割ることで、今回取り上げるPBR(株価純資産倍率)を求めることができます。
PERとの違い
PBRと関連のある指標に PER(Price Earnings Ratio:株価収益率) があります。
PERは、「株価が1株当たりの純利益(EPS)に対して、何倍になっているか」を示す指標で、PBRと同様に単位は「倍」です。
どちらも株価の妥当性を判断する際に用いられますが、PBRが企業の資産価値を評価の基準とする一方、PERは企業の収益性を評価の基準にするなど、評価対象が異なります。
PER(株価収益率)とは?計算方法やPBRとの違いをわかりやすく解説
企業の将来的な成長性を評価する際や、同業他社との比較、適正な株価を判断する時の重要な指標の1つがPER(株価収益率)です。本記事では、PERの概要や計算式、PERを見る際に注意すべき点などをわかりやすくご紹介します。日本M&Aセンターでは、上場企業の事業ポートフォリオ見直し、子会社の売却・切離し(カーブアウト)を多数ご支援しています。ご相談は無料です。ぜひご利用ください。無料相談はこちらPER(株
PBR(株価純資産倍率)の目安とは
PBRの目安は、業種や市場の状況によって異なるため、一概には言えませんが、一般的な傾向としては以下のような目安があります。
PBRの値 | 概要 |
---|---|
PBRが1倍未満 | 株価が純資産に比べて低いことを意味します。 これは、株価が割安であることを示すことがあります。ただし、PBRが1未満でも、企業の業績や将来の成長性を考慮する必要があります。 |
PBRが1倍 | 株価とBPSが等しいということを指します。 つまり1倍の時に会社が解散した場合、株主に投資額がそのまま戻ってくることを表します。この場合、株価が妥当な評価とされることがあります。 |
PBRが1倍以上 | 株価が純資産に比べて高いことを意味します。 これは、市場からの期待や将来の成長性が高く評価され、本来の企業価値よりも高い価格で株式が売買されていることがわかります。 ただし、PBRが高いからといって必ずしも投資機会とは限りません。他の財務指標や業績なども総合的に判断する必要があります。 |
PBRの目安は一般的な傾向であり、個別の企業や業種によって異なる場合があります。また、市場の状況や経済の動向も考慮する必要があります。投資判断をする際には、PBRだけでなく、他の財務指標や業績なども併せて考慮し、総合的な判断を行うことが重要です。
PBRは業種や業界によって標準的な数値が異なります。例えば、成長が見込まれるIT企業のPBRは高いことが多く、安定した製造業のPBRは低いケースが一般的です。そのため、PBRを見る際は同じ業種や業界の企業と比較することが大事です。
低PBR対策を東証が要請する背景
東京証券取引所は、市場での評価が低く、PBR1倍割れが日本企業の約半数を占めていることを問題視し、2023年3月にはプライムとスタンダードに上場している約3300社に対し、「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を要請していました。
その後2024年1月15日、「株価の改善に向けた具体策」を開示した企業のリストを公表しました。プライム市場の上場企業のうち2023年12月末時点で開示済みの企業は660社、155社が開示を検討していることがわかりました。
開示済み | 検討中との記載 | 記載なし | |
---|---|---|---|
プライム市場(n=1,656 社) | 660社(約40%) | 155社(約9%) | 841社(約51%) |
スタンダード市場(n=1,619 社) | 191社(約12%) | 109社(約7%) | 1,319社(約81%) |
出所)「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況(2023年12月末時点)/2024年1月15日 東京証券取引所 上場部
また、平均PBRが低い業種では対策の開示が進み、銀行では94%が開示(検討中を含む)の一方、平均PBRが高い情報・通信業・サービス業・小売業などでは相対的に開示が進んでいない傾向がわかりました。
今さら聞けない「PBR1倍割れ」とは?日本企業がとるべき対策は?
2023年3月、東京証券取引所(東証)から「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願いについて」が発表され、上場企業の多くで「PBR1倍割れ」が起きていること、資本収益性や成長性の観点で課題があることなどが指摘されました。東証が上場企業に対してこのような積極的な要請を行うのは異例として、大きな話題となりました。そして、東証が指摘したさまざまな課題のなかでも、特に注目を集めてい
PBR(株価純資産倍率)の算出例
以下X社のケースを例に、PBRを算出してみましょう。
株価:2,000円
発行済株式総数:1万株
純資産:2,500万円
株価:10万円
2,500万円 ÷ 1万株=2,500円
算出したBPS(1株当たり純資産)を用いて、次にPBR(株価純資産倍率)を計算します。
2,000円 ÷ 2,500円=0.8倍
このように純資産と並べてみて、株価がどの程度かを見ることで、会社の純資産と並べてみた株価やM&Aの算定の妥当性を妥当か推測できるのです。BPSは直前の期末の決算で報告された純資産額を基準とするため、リアルタイムで会社が持つ純資産額とは乖離する点に注意が必要です。
PBR(株価純資産倍率)を見る際のポイント
PBRを用いる際に認識しておきたいポイントは、以下の通りです。
PBR単独での判断は避ける
PBRはあくまで1つの指標に過ぎません。例えば、現在PBRが低い場合も、業績悪化によって資産価値が下がる可能性もあるため、PBRだけでなく、他の財務指標や業績、将来の成長見通しを合わせて総合的に評価することで、より正確な投資判断につながります。
同業種比較をする
PBRは業種や業界によって標準的な数値が異なります。例えば、成長が見込まれるIT企業のPBRは高いことが多く、安定した製造業のPBRは低いケースが一般的です。そのため、PBRを見る際は同じ業種や業界の企業と比較することが大事です。
時系列で変化を追う
PBRは単年度の数値だけでなく、時間の経過と共にどのように変化しているかを見ることも大切です。複数年度のPBRの推移を見ることで、会社が成長しているのか、衰退しているのか、手掛かりを得ることができます。
計算に用いられるのは帳簿上の数値である
PBRの計算には、帳簿上の純資産が用いられます。そのため、帳簿上の価値と実質的な資産に差異が生じている場合、時価を反映させた数値にはならないため注意が必要です。例えばPBRが1倍以下であっても、その会社の株価が必ずしも割安と断定できるわけではありません。
終わりに
PBRは株価と並べてみた純資産の割合を表すデータで、1倍が基準となり、それより小さければ株価が割安であると推測されます。他方で、よく混同されるPERは株価から見た純利益の割合を表すもので、数字が低いほど株価は割安であると推測可能です。
いずれも、対象会社の株価の妥当性を推測する際のデータの1つとして用いられますが、財務分析を行う際は複数のデータを参照することがのぞましいでしょう。