タクシー業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2025年最新版
タクシー業界に関する最新のM&A動向をご紹介します。 近年の市場推移やトピックス、業界再編にまつわる情報、タクシー業界の周辺業界を含めたM&A・事業承継の事例をわかりやすく解説しています。 また、日本M&Aセンターが取り扱う最新のM&A案件、当社仲介によりM&Aを実行された経営者様の事例、 各業界の動向やM&A(第三者承継)への理解を深めるセミナー情報などもご紹介します。
更新:
タクシー業界の
M&A案件(売却・事業承継案件)
一覧を見る
売却の無料相談
買収の無料相談
⽬次
タクシー業界の概要とM&A動向
タクシー業界とは、利用者を目的地まで運ぶためにタクシーを提供するサービスを行う業種です。この業界には、一般のタクシーの運行を行うタクシー会社や、ハイヤー、特定のサービスを提供する運転手付きの車両などが含まれます。タクシーは、主に都市部で利用され、運転手が乗客を乗せて移動する形態をとります。
タクシー業界の特徴の一つは、利用者のニーズに応じた柔軟なサービス提供です。例えば、急に移動が必要になったときに、道路の脇に止まっているタクシーをすぐに利用することができます。また、電話やアプリを使って呼ぶこともでき、便利さが増しています。このように、タクシーは人々の移動を助ける重要な役割を果たしています。
近年、タクシー業界ではM&Aが活発になっています。この動きは、業界の競争が激化していることや、技術革新が進んでいるためです。
タクシー業界のM&Aは企業の成長や競争力の強化を目的として行われています。同業のタクシー会社同士の統合や、周辺企業の買収、さらにはライドシェア企業との提携を通じて、業界全体が変化に対応しながら進化していることが見て取れます。これらの動きは、タクシー業界のサービスの質を向上させるだけでなく、利用者にとっても利便性を高める結果につながるのです。
例えば、今までタクシー会社がそれぞれ独立して運営されていた時代から、大手企業が小さなタクシー会社を買収することで規模を大きくし、より多くのサービスを提供するようになっています。これにより、利用者はより多様なサービスを受けられるようになります。タクシー業界におけるM&Aは、企業が生き残るための戦略の一環として行われています。
また、近年はライドシェア(配車サービス)の普及が進んでいます。これは、スマートフォンのアプリを使って自分の近くにいる車を呼ぶサービスで、ウーバーなどが代表的な例です。ライドシェアが流行することで、従来のタクシー業界は競争が激しくなり、タクシー会社もこれに対抗するためにM&Aを進めています。例えば、複数のタクシー会社が連携してライドシェアに対応するシステムを作ることで、効率よく運営を行おうとしています。
このような背景から、タクシー業界は単なる移動手段の提供から、デジタル化や新しいビジネスモデルへの適応が求められています。M&Aはその一つの手段であり、タクシー会社が競争力を維持し、成長するために重要な役割を果たしています。最近のM&Aの動向は、競争が激化する中で企業が生き残り、サービスを向上させるための戦略として注目されています。技術革新やライドシェアの普及に伴い、タクシー業界も変化を求められているため、今後の展開に注目することが大切です。
タクシー業界をとりまく環境
市場規模・輸送量・営業収入の推移
タクシー業界のマクロな需給動向を把握するうえで、輸送人員(人)と営業収入(百万円)の2つの指標が重要です。国土交通省「ハイヤー・タクシーの車両数及び輸送人員」によると、ハイヤー・タクシーの輸送人員は2012年度(平成24年度)の約19.5億人から2019年度(令和元年度)の約13.1億人へ緩やかに減少してきました。新型コロナウイルス感染症の影響を受けた2020年度には約7.9億人まで大きく落ち込み、その後2022年度には約9.4億人まで回復しています。
営業収入の観点では、一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会が公表している「営業収入の対2019年同月比(2020年1月〜2025年9月)」において、2019年を100とした指数が示されています。2020年は4〜5月にかけて30%台まで急落し、年間を通じても6割前後の水準にとどまりました。2021年も7割を下回る月が多く、2022年にようやく7〜8割台、2023年には8〜9割台へと段階的に回復しています。2024年は7〜9月に90%台まで回復し、2025年も8〜9月に95%台まで回復していますが、年初から夏までは60〜80%台で推移しています。
輸送人員がコロナ前を下回る一方で営業収入がほぼ回復していることから、1人当たり単価(運賃収入)は上昇していると推測されます。その背景として、都市部を中心とした初乗り運賃改定、迎車回数の増加、時間貸し・観光タクシー・空港定額など高単価メニューの比率上昇、インバウンドの長距離利用復活などが挙げられます。一方で、燃料費・人件費の上昇が利益率を圧迫しており、単純な売上回復がすぐに収益性の改善につながっているとは限らない点には留意が必要です。
タクシーサービスのカテゴリ別では、「一般タクシー」「ハイヤー」「個人タクシー」に加え、介護・福祉輸送(ケアタクシー等)、観光・インバウンド対応タクシー、アプリ連携タクシーなどの付加価値型サービスが伸長しています。全国的な公的統計で詳細な構成比を把握することは難しいものの、都市部ではアプリ経由の配車比率が売上の数割を占める事業者も多く、法人契約・定額送迎・空港送迎などの法人向け案件が売上の安定化に寄与しているケースも増えています。
配車チャネル別にみると、従来型の流し・駅待ちに加え、無線・電話配車、スマートフォン配車アプリ、企業・自治体との専用契約といった多様なチャネルが併存しています。大都市圏ではアプリ配車の比率が年々上昇している一方、地方の小規模事業者では依然として電話・無線配車の比重が高いなど、地域差が大きいことがうかがえます。
- M&A観点
- 輸送人員・営業収入は中長期的には緩やかな減少トレンドにあり、足元ではコロナ禍からの回復局面にありますが、燃料費・人件費の上昇で収益性は厳しい状況が続いています。このような環境では、運賃規制の範囲内で効率化・高付加価値化を進める必要があるため、スケールメリットや広域ネットワーク、デジタル基盤を持つ事業者への集約・再編が進む可能性が高いです。M&Aにより、営業収入の季節変動や需要ショックを複数エリア・複数サービスで平準化するポートフォリオ構築が重要な論点になります。
事業者・車両・拠点の構造動向
タクシー事業者の構造をみると、中小事業者が多数を占める中で、大手グループや地域有力事業者による再編が進行しています。一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー事業の現状」によると、2013年時点で法人タクシー事業者は約1.5万社、法人タクシー車両は約20万両、個人タクシーは約4万両とされています。その後、国土交通省の統計では車両総数が2022年度に約20.9万両まで減少しており、事業者数・車両数ともに長期的な縮小傾向にあります。
1事業者あたりの車両規模をみると、都市部では100両以上を保有する事業者が多い一方、地方では10〜30両規模の中小事業者が多数派です。車両規模が小さい事業者は、運行管理者・整備要員・配車要員などの固定コストを十分に分散できず、車両更新・IT投資・人材採用の面で相対的に不利になりやすい構造です。これに対し、大手グループや複数エリアで展開する地域有力事業者は、配車システム・教育研修・広告宣伝・車両調達・燃料調達をグループで共同化し、スケールメリットを活かした経営が可能になりつつあります。
車両構成では、従来型のセダン型タクシーから、スライドドア・大きな荷室・段差の少ないユニバーサルデザイン車両(JPN TAXI等)への切り替えが進んでいます。これにより、車いす利用者や高齢者、インバウンド旅行者を含む大きな荷物を持つ乗客への対応力が高まっています。一方で、LPガス車両からハイブリッド車・電気自動車(EV)への転換や、広い車室を持つ車両の導入には多額の投資が必要となり、特に小規模事業者にとっては負担が大きい状況です。
営業所・待機場所・無線配車センターについては、都市部では駅前や繁華街のターミナルに複数の拠点を持つ事業者が多く、地方では自治体や病院・ショッピングセンター等の施設と連携した待機場所の確保が経営上の重要テーマになっています。また、複数の事業者が共同で無線配車センターを運営したり、共通の配車アプリに接続するケースも増えており、配車インフラの共同化・プラットフォーム化が進んでいます。
- M&A観点
- 事業者・車両・拠点の構造からみると、車両規模とエリアカバレッジ、車両の新しさ(ユニバーサルデザイン・低公害車比率)、共同配車インフラへのアクセスが競争力を左右する要因になっています。M&Aでは、買い手が既存の拠点ネットワークに対象会社の営業所をどのように組み込むか、車両更新投資をどのスピード感で進めるかがPMIの重要なテーマになります。また、無線センター・アプリ等の共通インフラに参加しているかどうかは、システム統合コストやスケールメリットのポテンシャルを評価する際のポイントになります。
需要側ファクター:人口動態・高齢化・インバウンド
インバウンド需要もタクシー業界にとって重要です。観光庁「インバウンド消費動向調査2024年暦年の調査結果(確報)の概要」によると、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,257億円と推計され、2019年比で約69%増、2023年比では約53%増と過去最高を更新しました。国籍・地域別では中国・台湾・韓国・米国・香港の上位5地域で全体の約3分の2を占めており、東京・大阪など大都市圏への集中がみられます。別の公表では、2024年の訪日外国人旅行者数は約3,686万人とされており、人数ベースでも2019年を上回る水準に達しています。
インバウンド客のタクシー利用は、空港〜都市部のアクセス、観光地間の移動、夜間の移動手段など、多くが高単価・長距離の利用です。多言語対応・キャッシュレス決済・大容量トランクを備えた車両・定額運賃メニューなどが整っている事業者ほど、インバウンド需要を取り込みやすいと考えられます。一方で、インバウンド需要には為替・地政学リスク・感染症・自然災害など外部要因による変動が大きく、特定エリア・特定国に過度に依存することはリスクとなります。
- M&A観点
- 人口減少・高齢化・インバウンド需要という3つの需要軸が、エリアごとのタクシー需要の中身を大きく変えています。買い手企業は、対象会社のエリアにおける人口動態・高齢者比率・インバウンドの伸びを分析したうえで、「通院・生活支援」「観光・インバウンド」「ビジネス需要」などどのセグメントに強みがあるのかを見極める必要があります。M&A後は、自社の強み(例えばインバウンド向けの受け皿や多言語コールセンター)と組み合わせて、需要構造に沿ったサービスポートフォリオを再設計することが重要です。
制度・規制・DXの動向
タクシー事業は、道路運送法および同施行規則を根拠とする免許制・事業計画認可制のもとで運営されています。また、需給調整や不当な運賃競争の防止などを目的として、「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(タクシー適正化・活性化法)」が制定されており、特定地域では新規参入・増車の抑制や減車計画の策定などが行われてきました。
近年は、地域公共交通の維持や観光需要の取り込みを背景に、規制の運用も見直されています。過疎地では自家用車を活用した「自家用有償旅客運送」が拡大しており、住民ボランティアやNPO等がタクシー事業者と連携して地域内輸送を補完するケースが増えています。また、都市部では「日本型ライドシェア」の導入や時間帯・エリアを限定した自家用車活用の議論が進んでおり、タクシー事業者にとっては競合であると同時に、新たな協業・プラットフォーム参加の機会にもなり得ます。
DXの観点では、配車アプリ・オンライン決済・AIによる需要予測・動態管理システムなどの導入が進んでいます。全国ハイヤー・タクシー連合会の統計や事例紹介では、大手・準大手を中心に、スマートフォンアプリ経由の配車、QRコード決済や交通系ICカード決済の対応、クラウド型運行管理・労務管理システムの導入事例が紹介されています。これらは、顧客体験の向上だけでなく、売上管理の効率化・ドライバーの稼働最適化・安全運転指導・コンプライアンス管理にも寄与しています。
一方で、DXには個人情報保護やサイバーセキュリティの課題も伴います。配車アプリや車載機器では、乗車履歴・位置情報・決済情報といった機微性の高いデータを扱うため、個人情報保護法への対応だけでなく、不正アクセス・情報漏えい・システム障害に対するリスク管理が求められます。また、電子帳簿保存法・インボイス制度への対応も進める必要があり、会計・請求・領収書発行プロセスの電子化が中小事業者にも広がりつつあります。
- M&A観点
- 規制・DX環境は、単独でのIT投資が難しい小規模事業者と、プラットフォームや共通基盤を持つ大手事業者との間で格差を生みやすい領域です。買い手企業にとっては、自社が保有する配車アプリ・決済基盤・運行管理システムへの統合を通じて、対象会社の業務をどの程度標準化できるかがシナジーの源泉となります。一方で、地域の需給調整ルールや自家用有償旅客運送の運用状況など、行政との関係性も重要なデューデリジェンス項目となります。
供給・ロジスティクス/サプライチェーン
タクシー事業のコスト構造では、人件費に次いで燃料費・車両関連費が大きな比重を占めます。経済産業省・資源エネルギー庁の統計等によれば、レギュラーガソリン全国平均価格は2020年の136.4円/Lから2022年には170.4円/Lへと上昇し、2023年も170円台前後の高値水準が続きました。
また、政府による燃料油価格定額引下げ措置に関する資料では、2025年12月時点のガソリン全国平均価格が163.7円/Lとされる一方、補助金がなければ190円/L前後の水準となる試算も示されています。 軽油価格も同様に高止まりしており、タクシー事業者にとって燃料費の変動は収益を大きく左右するリスク要因になっています。
車両調達コストや車両更新投資も重要です。ユニバーサルデザイン車両やハイブリッド車・EVは、従来型車両に比べて車両価格が高く、1台あたり数百万円規模の投資が必要になります。また、LPガスやEV充電インフラの整備、定期点検・車検・タイヤ等の補修費、任意保険・車両保険なども含めると、1台あたりのライフサイクルコストは無視できない水準です。特に小規模事業者では、老朽車両の更新を先送りせざるを得ないケースも多く、そのことが安全性やブランドイメージに影響するリスクもあります。
車両稼働率の観点では、都市部では朝夕のピークや飲食・イベント需要が高い一方、昼間や深夜帯の空車時間が課題となり、地方では終日需要が薄く、待機時間が長くなる傾向があります。国土交通省「自動車輸送統計調査年報」では、自動車旅客輸送全体の人キロ・輸送人員が公表されており、タクシーについても新型コロナ禍で大きく落ち込んだ後、徐々に回復している様子が確認できますが、鉄道・航空と比べると回復のスピードはやや緩やかです。
- M&A観点
- 燃料費・車両更新費・保険料などの固定費をどのように平準化・最適化するかは、タクシー業界のM&Aシナリオにおける重要な論点です。買い手企業が持つ共同購買スキームや、EV・ハイブリッド車の大口導入枠、燃料カードや保険の優遇条件を対象会社に適用できれば、1台あたりコストを大きく圧縮できる可能性があります。また、複数エリアの車両を一体で運行管理することで、シフトや配車を平準化し、稼働率の向上と回送距離の削減を図ることも、PMI段階での検討テーマとなります。
人材:タクシー運転者の需給と働き方
タクシー運転者の人材不足と高齢化は、全国共通の課題です。内閣府規制改革推進会議で示された「タクシー運転手の現状とタクシーに関する事故データ」によると、2010年から12年間でタクシー運転者数は約40%、約14万9千人減少したとされています。また、タクシー運転者の有効求人倍率は全産業平均の約3倍にあたる4.13倍とされており、極めてタイトな労働市場にあることが示されています。
厚生労働省「統計からみるハイヤー・タクシー運転者の仕事」では、タクシー運転者の平均年齢が50歳代後半と高く、年間労働時間や年収水準も他産業と比較して特徴的であることが示されています。歩合給の比率が高い賃金体系や、深夜・早朝を含む不規則な勤務形態が多いことから、若年層や女性ドライバーの参入が進みにくい構造が残っている一方、最近では固定給と歩合給を組み合わせた安定的な報酬制度や、日勤中心の勤務体系を用意する事業者も増えています。
タクシー運転者として乗務するには、普通自動車第二種運転免許の取得が必要です。第二種免許の取得には運転経験年数や適性検査など一定の要件があり、事業者による養成・研修の負担も小さくありません。近年は、未経験者採用に際して、教習費用の会社負担・給与保証期間の設定・研修カリキュラムの整備などを通じて、参入障壁を下げようとする取り組みが各社で進められています。
- M&A観点
- 人材面では、「若年ドライバー比率」「女性ドライバー比率」「教育・採用体制」「離職率・勤続年数」といった指標が、対象会社の評価に直結します。買い手にとっては、人材獲得力の高い事業者をグループに取り込むことで、自社単独では採用が難しいエリアでの供給力を確保できるメリットがあります。また、PMI段階で賃金体系や評価制度をどのように統合するかは、モチベーション・離職率に直結するため、慎重な設計が求められます。
ガバナンス・広告・品質・コンプライアンス
タクシー事業は、公共交通として利用者の安全・安心を守る義務があり、安全運転・飲酒運転防止・健康管理・ハラスメント防止などに関する社内規程の整備が求められます。国土交通省や警察庁のガイドラインでは、点呼・アルコールチェック・運転者の健康状態確認・事故発生時の報告体制など、具体的な運行管理基準が示されており、これらを遵守するための運行管理者・整備管理者の配置も義務付けられています。
情報セキュリティの観点では、配車システム・決済システム・顧客管理システムなどのサイバーリスクが高まっています。システム障害や不正アクセスが発生した場合、営業停止だけでなく個人情報漏えいリスクにも直結するため、外部ベンダーのセキュリティ水準・バックアップ体制・インシデント対応プロセスを含めた管理が必要です。特にクラウドサービスの利用が増える中で、契約面・技術面のチェックリストを整備しておくことが求められます。
- M&A観点
- ガバナンス・コンプライアンス体制は、デューデリジェンスで最も重視される項目の一つです。買い手は、過去の事故・処分歴・労務問題・社保未加入・未払残業代などの潜在リスクを洗い出す必要があります。一方で、ガバナンス水準が高く、内部統制や安全管理がしっかりしている事業者は、M&Aにおいてプレミアムがつきやすい資産といえます。PMIでは、グループ全体で安全・コンプライアンスポリシーを統一しつつ、地域事情に応じた運用の柔軟性を確保することが重要です。
M&Aリレーション:再編トレンドと周辺業種との連携
タクシー業界では、地域ごとの需要構造と経営環境の差を背景に、大手グループによる中小事業者の取り込みや、周辺業種との連携が進んでいます。日本M&Aセンターやニュースリリース等をみると、上場タクシー会社や地方大手が、地場のタクシー事業者やハイヤー事業者を順次グループ化している事例が多数見られます。また、バス・トラック・倉庫など他の運輸業との一体運営や、整備工場・燃料販売・コールセンター等との垂直統合も進んでいます。
周辺サービスとの連携としては、観光業(旅行代理店・ホテル)、医療・介護(通院・福祉輸送)、EC・物流(ラストワンマイル配送)、フィンテック(決済・ポイント)、ITプラットフォーム(配車アプリ・MaaS)など、多様なプレーヤーとの資本業務提携・共同事業が進展しています。特に配車アプリ事業者との連携は、都市部における需要獲得とデータ活用の観点から重要であり、一部ではアプリ事業者がタクシー事業者への出資や共同ブランド展開を行うケースも出てきています。
- M&A観点
- タクシー事業単体だけでなく、「地域交通・モビリティサービス全体の一部」としての位置づけを踏まえると、今後のM&Aは、①同業統合によるスケールメリット獲得、②バス・トラック・物流・整備等を含めたモビリティグループ化、③配車アプリ・決済・データ基盤を持つ企業との連携強化、という3つの方向性が想定されます。買い手・売り手とも、自社がどのエコシステムの中でどの役割を担うのかを明確にしたうえで、提携・統合のストーリーを描くことが重要です。
タクシー業界の今後の課題と展望
利益率圧迫と料金体系の最適化
- 課題
- タクシー業界では、燃料費・人件費・車両関連費の上昇により、営業収入がコロナ前水準近くまで回復しているにもかかわらず、利益率が十分に回復していない事業者が多い状況です。燃料価格は2020年から2024年にかけて大きく上昇し、運転者の人件費も人手不足と働き方改革関連法への対応により上昇基調にあります。一方、運賃・料金の改定には行政の認可が必要であり、短期間で大幅な値上げを行うことは難しいため、コスト上昇分を完全に価格転嫁することができていません。
- 対応策
- 今後3〜5年を見据えると、①需要に応じたシフト・車両配置の最適化、②高付加価値サービス(観光・定額運賃・法人契約等)の拡大、③燃料・車両・保険の共同調達によるコスト削減、④DXを活用した配車効率化・空車時間削減といった取り組みが重要になります。料金面では、地域ごとの運賃制度の範囲内で、短距離利用の利便性を確保しつつ、長距離・時間貸し・定額メニューの単価を適正化することが求められます。また、インボイス制度やキャッシュレス決済の普及に対応し、法人・個人双方からの需要を取り込みやすい料金体系・請求フローを整備することも有効です。
- M&A観点
- M&Aを通じて複数エリア・複数サービスを束ねることで、燃料・車両・保険のスケールメリットを享受しやすくなります。PMIでは、グループ全体で運賃体系や割引制度をどこまで統一するか、どのコスト項目を共同化するかを設計し、3〜5年で営業利益率を何%改善するかといったKPIを設定することが重要です。特に、燃料単価や車両購入条件の改善による1台あたりコスト削減額をシナリオとして定量化することで、投資回収の根拠を明確にできます。
ロジスティクス・運行管理とネットワーク再編
- 課題
- 都市部では渋滞・駐停車規制・ターミナルの混雑などにより、効率的な運行が難しく、地方では需要の薄さから長時間の待機・空車走行が発生しやすい構造です。複数の事業者が同一エリアでバラバラに配車・運行している場合、利用者にとっては「なかなかつかまらない時間帯」と「空車が溢れている時間帯」が併存し、全体としての稼働率が低下します。また、無線センターや配車アプリが乱立している地域では、利用者の利便性と事業者のコスト負担の両面で非効率が生じています。
- 対応策
- 運行管理の高度化に向けては、過去の乗車データを用いた需要予測、AIによる配車・待機場所の最適化、広域での共同無線センター・共通配車アプリの活用などが有効です。また、鉄道・バス・デマンド交通との接続拠点を整理し、自治体や他の交通事業者と連携したダイヤ・停留所配置の最適化を進めることも重要です。地方では、自治体主導でエリア内のタクシー・乗合タクシー・コミュニティバス等を一体的に設計し、「地域公共交通計画」に基づく役割分担を明確にする動きが広がっています。
- M&A観点
- M&Aにより複数の事業者・無線センター・営業所を統合することで、運行管理の一元化・拠点の再配置・共同配車への移行が可能になります。PMIでは、配車システムや無線周波数の統合、営業所や待機場所の集約・再配置、ドライバーのエリア配分の見直しといった施策を計画的に進める必要があります。3〜5年のスパンで、車両稼働率・空車走行距離・1台あたり売上高といったKPIを設定し、統合前後での改善効果を定量的にモニタリングすることが肝要です。
人材確保・働き方改革と人材ポートフォリオ
- 課題
- タクシー運転者の高齢化と人手不足は、今後も継続する構造的な課題です。前述のとおり、運転者数は過去10年以上にわたり減少しており、有効求人倍率も全産業平均を大きく上回っています。働き方改革関連法により時間外労働の上限規制が強化される中、長時間労働に依存したビジネスモデルは持続しにくくなっています。また、若年層・女性・外国人材の活用が十分に進んでいない事業者も多く、採用チャネルや雇用形態の多様化が課題になっています。
- 対応策
- 採用・定着を強化するためには、①固定給と歩合給を組み合わせた安定的な賃金体系、②日勤中心や短時間勤務など多様な勤務パターン、③研修・キャリアパス・評価制度の明確化、④安全・健康に配慮した就業環境整備が求められます。また、第二種免許取得費用の会社負担や、未経験者向け育成プログラムの整備、女性用設備や育児・介護と両立しやすいシフト設計も重要です。今後は、DXを活用したナビゲーション支援・接客マニュアル化などにより、未経験者でも一定品質のサービスを提供できる環境づくりが進むと見込まれます。
- M&A観点
- 人材面で強みを持つ事業者(若年ドライバー比率が高い、教育・採用体制が整っている等)は、M&Aにおいて高く評価されやすい傾向があります。買い手企業は、グループ全体で採用ブランドを統一し、求人媒体・学校・ハローワーク・人材紹介会社などへのアプローチを一元化することで採用効率を高めることができます。また、PMIでは評価・報酬制度の統合が離職率に大きく影響するため、「短期的な制度統一」ではなく、「段階的なすりあわせ」と「現場ヒアリング」を重視したプロセス設計が重要です。
デジタル/データ活用戦略
- 課題
- 配車アプリや車載機器から得られるデータは増えているものの、多くの事業者では十分に活用し切れていない状況です。需要予測・ダイナミックプライシング・CRM・安全運転評価・不正検知など、データ活用の余地は大きい一方、自社開発や高度な分析人材の確保は中小事業者にとって難易度が高い課題です。また、複数システムが混在している場合、データ形式やマスタが統一されておらず、グループ内でデータを横断的に活用できないケースも見られます。
- 対応策
- 今後は、①配車システム・タコグラフ・ドライブレコーダー・決済システムなどから得られるデータを共通基盤に集約すること、②BIツールや簡易なダッシュボードを用いて、現場でも直感的に状況を把握できる環境を整えること、③外部のデータ分析・AIベンダーとの連携により高度な分析・アルゴリズムを活用することが重要です。また、EC・MaaS・ポイントプログラムなど他のプラットフォームとのID連携を通じて、顧客接点を拡張し、リピート・クロスセルを促進するCRM戦略も検討余地があります。
- M&A観点
- M&Aでは、グループ内でどのデータ基盤・配車システムを標準とするかが重要な設計テーマになります。買い手が既に強力なデータ基盤やアプリを保有している場合、対象会社のシステムをどのタイミングで切り替えるか、過去データをどこまで移行するかといったPMI計画が必要です。3〜5年のスパンで、アプリ経由配車比率・1台あたり売上高・事故件数・クレーム件数などのKPI改善を定量化することで、DX投資とM&Aの効果を可視化できます。
ガバナンス/コンプライアンスとレピュテーションリスク
- 課題
- タクシーは公共交通として社会的な注目度が高く、事故・ハラスメント・不適切対応などのトラブルが発生した場合、SNS等を通じて短時間で評判に影響が及ぶ可能性があります。特に高齢ドライバー比率が高い事業者では、健康起因事故や認知機能低下リスクへの対応が重要です。また、労働時間管理や賃金未払い、社会保険未加入などの労務リスクも、M&Aの際に重要なチェックポイントとなります。
- 対応策
- ガバナンス強化に向けては、①安全・コンプライアンスに関するグループポリシーの明文化、②内部通報制度やコンプライアンス教育の実施、③運転者の健康チェック・年齢に応じた就業制限、④ハラスメント防止・苦情対応プロセスの整備などが必要です。また、第三者認証や自治体の優良事業者認定制度の取得を通じて、ガバナンス水準を対外的に示すことも、採用や法人営業の観点から有効です。
- M&A観点
- 買い手はデューデリジェンスで「潜在的な法令違反・訴訟リスク・行政処分歴」を見極め、必要に応じて価格調整や契約上の保証条項(表明保証)でリスクを管理する必要があります。一方で、対象会社のガバナンス水準が高い場合は、そのノウハウをグループ全体に展開することで、事故・トラブル発生率の低減や保険料の削減につなげることができます。PMIでは、マスタの統合(運賃・顧客情報・運行履歴等)とコンプライアンスルールの統一を両立させることが重要です。
拠点・フォーマット戦略(都市/地方・用途別)
- 課題
- 都市圏と地方圏では、需要のボリュームだけでなく、利用目的や時間帯構成が大きく異なります。都市部ではビジネス・夜間・インバウンド需要が多く、地方では日中の生活支援・通院・観光周遊などが中心となります。また、空港・新幹線駅・大型商業施設などの拠点を押さえられるかどうかが、売上構造に大きく影響します。拠点獲得には賃料・権利金・長期契約などのコストが伴うため、単独での出店戦略には限界もあります。
- 対応策
- 用途別・エリア別に「都市ハイヤー・ビジネスタクシー」「観光・インバウンド特化タクシー」「介護・福祉・地域包括ケア向けタクシー」「企業・学校送迎」「深夜・イベント対応」などのフォーマットを設計し、それぞれに適した車両・人材・拠点を組み合わせることが重要です。また、鉄道・バス・デマンド交通との結節点に拠点を置き、乗り継ぎ利用を取り込む戦略も有効です。地方では、自治体との協定に基づく地域包括交通の一部として、乗合タクシーやコミュニティバスとの兼業・連携を進める動きもみられます。
- M&A観点
- M&Aでは、既存拠点のポートフォリオに対して「ホワイトスペース(未進出エリア)」を埋めるような案件か、あるいは既に強みを持つエリアでのシェア拡大案件かを整理することが重要です。PMIでは、重複拠点の統廃合や、用途別フォーマットへの再配置(例:ある営業所を観光特化拠点に再編する)を通じて、3〜5年でエリアごとの収益性改善を目指します。
インバウンド・地域連携・MaaSとの関係
- 課題
- インバウンド需要はタクシー業界の成長ドライバーである一方、為替・地政学・感染症など外部ショックに脆弱です。また、観光地ではタクシー・バス・シェアサイクル・レンタカーなど多様なモビリティが競合・補完関係にあり、単独でのサービス設計だけでは利用者にとって最適な移動体験を提供しにくい面があります。
- 対応策
- 観光庁や自治体、DMO(観光地域づくり法人)等が進める観光まちづくりの中で、タクシー事業者がどのような役割を担うかを明確にすることが重要です。具体的には、①多言語対応・キャッシュレス決済・チップ文化への対応、②空港・主要駅から観光地への定額運賃サービス、③観光タクシー(モデルコース・ガイド機能付)の商品化、④MaaSプラットフォームへの運賃・時刻情報の提供などが挙げられます。これにより、インバウンド・国内観光客の利便性向上と、タクシーの高付加価値サービス化を両立できます。
- M&A観点
- 観光・インバウンドに強みを持つ事業者の獲得は、買い手にとって高いシナジーが期待できる領域です。ホテル・旅行会社・オンライン旅行代理店(OTA)との連携経験や、観光タクシー商品・多言語ドライバーを保有しているかどうかは、デューデリジェンスにおける重要な評価ポイントになります。また、MaaSプラットフォーム事業者や観光業との資本業務提携を組み合わせることで、タクシー事業単体を超えたエコシステムを構築する可能性もあります。
倒産・再編の地合いと金融環境
- 課題
- 人口減少・需要減少・コスト増加の中で、単独では今後の投資や後継者確保が難しいタクシー事業者も増えています。信用調査会社の統計では、運輸・倉庫業全体の倒産件数は2020年以降増減を繰り返しつつも、燃料高や人件費上昇の影響を受けて、タクシーを含む旅客運送業の財務基盤は必ずしも強固とはいえない状況です。金利の上昇や金融機関の与信姿勢の変化も、中小事業者の資金繰りを圧迫する要因となり得ます。
- 対応策
- 事業者側は、金融機関との対話を通じて中長期の投資計画・返済計画を共有し、経営改善計画や地域交通政策との整合性を説明することが重要です。自治体や公的支援制度を活用した車両更新・EV導入・DX投資の補助金を検討するとともに、グループ化・業務提携・M&A等を視野に入れたリスク分散戦略が求められます。早期の第三者承継・共同経営に踏み切ることで、金融機関からの評価を維持・向上させるケースも想定されます。
- M&A観点
- タクシー業界では、後継者難と投資負担を背景に、「攻めのM&A」だけでなく「守りのM&A(事業承継型)」が今後も増える可能性があります。買い手・売り手ともに、金利水準や融資条件の変化、地域金融機関の姿勢を踏まえつつ、事業価値評価と資金調達スキームを検討する必要があります。特に、複数の事業者が同時に再編のテーブルに載るケースでは、どの順番で統合を進めるか、どの事業者を核としたグループにするかといった「再編マップ」の設計が重要です。
リスク管理・BCPとシナリオプランニング
- 課題
- 新型感染症、自然災害、燃料価格高騰、制度変更(ライドシェア規制緩和等)、サイバー攻撃など、タクシー事業を取り巻く外部リスクは多様化しています。特に、コロナ禍では需要が急減し、一部事業者では売上が一時的に半分以下になるなど、想定外のショックが現実化しました。こうしたリスクに対して、あらかじめシナリオプランニングや事業継続計画(BCP)を作成している事業者はまだ多くありません。
- 対応策
- 今後3〜5年を念頭に置いたシナリオとして、①ベースケース(輸送人員・営業収入が2019年比90〜100%で推移)、②上振れケース(インバウンドや地域連携の進展により110%程度まで拡大)、③下振れケース(新たな感染症や地政学リスク等で80%程度に低下)を想定し、それぞれのケースで必要となるコスト構造・車両台数・ドライバー数・投資計画を試算しておくことが有効です。同時に、災害時の代替拠点・燃料供給・通信手段・人員配置などのBCPを整備し、自治体や他の交通事業者との連携プロトコルを準備しておく必要があります。
- M&A観点
- M&Aを通じてエリア分散・サービス分散を図ることは、外部ショックに対するレジリエンス向上につながります。PMIでは、グループ全体で共通のリスクマネジメント方針・BCPを策定し、各社のリスク情報・インシデント情報を共有する仕組みを構築することが重要です。また、シナリオごとに「追加投資を加速する局面」「守りを優先する局面」を整理し、資本配分・M&A戦略を柔軟に切り替えられるガバナンス体制を整えることが求められます。
- 参考URL
-
厚生労働省「統計からみるハイヤー・タクシー運転者の仕事」
e-Gov法令検索「道路運送法」
e-Gov法令検索「特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法」
経済産業省 資源エネルギー庁「燃料油価格定額引下げ措置」
燃料油価格定額引下げ措置事務局「ガソリン全国平均価格の推移」
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「統計調査」
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー事業の現状」
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「タクシー運転者の年収・労働時間」
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「TAXI TODAY in Japan 2025」
一般社団法人全国ハイヤー・タクシー連合会「営業収入の対2019年同月比(2020年1月〜2025年9月)
政府統計の総合窓口(e-Stat)「自動車輸送統計調査 年報」
燃料代高騰の推移と見直しのポイント!高速道路をお得に走るならエヌ・ビー・シー協同組合
一般財団法人日本エルピーガス協会「統計資料:価格」
国土交通省「ハイヤー・タクシーの車両数及び輸送人員」
国土交通省観光庁「インバウンド消費動向調査 2024年暦年の調査結果(確報)の概要」
統計局「人口推計(2024年(令和6年)10月1日現在)」
内閣府規制改革推進会議「タクシー運転手の現状とタクシーに関する事故データ」
売却の無料相談
買収の無料相談
タクシー業界における
M&A活用のメリット
タクシー業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。
- 譲渡側のメリット
-
- 取引シナジーにより人員の稼動の改善
- 採用、社員への教育体制の強化
- 適切な会社に譲渡すれば、社員の雇用は保証され、成長機会も増える
- 事業意欲旺盛な会社との協業により、相互に発展することが可能
- 後継者問題を解決できる
- オーナー社長は個人保証や担保提供から解放され、ハッピーリタイアができる
- 個人保証や担保提供から解放されたうえで役員等として継続してかかわることも可能
- 譲受け側のメリット
-
- 新たな商圏への進出
- ブランドの引き継ぎ
- 人的リソースの獲得
- 売上規模・シェアの拡大が見込める
- 事業多角化・新規事業への参入
- バリューチェーンの補完・関連事業領域の拡大
- リスク分散ができる
- 財務力強化・コストの削減(仕入れコスト、管理部門コスト、物流コスト等)
売却の無料相談
買収の無料相談
タクシー業界で
M&Aを実行する際のポイント
タクシー業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。
- 加入組合
- 労働環境
- 車両、設備の充実度
- 人的リソース管理
- 財務問題
- 労働問題
- コンプライアンス
- ガバナンス・管理体制
ここでは一般的なポイントをご紹介させていただいておりますが、実際には、個別事情を勘案すると大きく変わります。また、業界によっては独自の規制や商習慣が存在するため、M&Aの仲介を行ううえで、それぞれの業種・業界の特性を正しく理解していることが非常に大切です。日本M&Aセンターでは各業界に精通したコンサルタントが所属しているため、専門性の高いサービスを提供させていただくことが可能です。
当社では秘密保持を厳守のうえ、個別相談を無料でお受けしています。当社は全国に拠点を展開しております。気になることがありましたら、お気軽にお問い合わせください。
タクシー業界における
M&Aの価格相場
タクシー業界のM&Aにおける価格や相場感について説明いたします。まず、中小企業のM&Aには明確な相場が存在せず、最終的な価格は売り手と買い手の交渉によって決まることが特徴です。M&Aの価格は、業種や企業の規模、人材の質、財務状況、ブランド力、将来性、市場環境など、多岐にわたる要素によって変動します。そのため、個別の状況を考慮しながら価格が算出されることになります。
M&Aの価格算定にはいくつかの評価方法がありますが、その中の一つに「取引事例法」があります。取引事例法は、過去のM&A事例の中から、事業内容や地域、財務指標が似ている企業の売買実績を基に価値を評価する方法です。取引事例法において重要なのは、類似の取引事例を参考にすることですが、類似条件を見つけるためには、相当数の事例を蓄積する必要があります。非上場企業のM&Aの多くが非公開情報であることから、他社の実績を参考にすることはハードルが高い方法でもあります。その点、日本M&Aセンターでは、M&Aにおいて成約実績10,000件超、M&A成約件数で世界No.1*のギネス世界記録™に5年連続で認定されるなど、豊富な実績があります。事業内容や地域、財務指標に基づく似た会社の売買事例を選定し、一定のルールに従って公正な価値評価を行うことが可能です。こちらから当社の株価算定シミュレーションを体験することができます。
※ギネス世界記録™:M&Aフィナンシャルアドバイザリー業務の最多取扱い企業 2020~2023年に続き、5年連続でギネス世界記録™に認定
次に、より高い評価を得て会社を高く譲渡売却するためには、よりシナジーのある買い手を見つけることが重要です。M&Aの最終価格は、売り手企業と買い手企業の交渉によって決まるため、買い手が「この会社が欲しい」と思う要素を増やしていく必要があります。例えば、現在、タクシー業界の市場では人材不足が全体的な問題となっており、若くて優秀な人材を採用できる利点がある場合、買い手企業にとってM&Aの魅力が増します。
さらに、コンプライアンスやガバナンスに関する問題も重要な要素です。具体的には、顧客とのトラブルが存在しないか、社会保険への適切な加入状況が確認されることが求められます。これらの問題があると、潜在的な費用や負債として見なされ、価格交渉において不利な要因となり得ます。これらの要素が事前にクリアである場合、買い手企業も安心してM&Aを進めることができ、価格交渉もスムーズに進行しやすくなる傾向があります。
最後に、M&Aを成功させるためには、総合的に企業の魅力を高める努力が欠かせません。これは、価格評価への影響だけでなく、交渉の流れにも深く関わる要素であるといえるでしょう。
なお、実際には個別の業種や取引環境等によって価格相場は変動しますし、場所や経営状態によっても大きく左右されます。初期的なご相談や、簡易的な株価診断は無料にておこなっておりますので、よりくわしく評価や課題について聞きたい方は、弊社コンサルタントから詳細をご説明いたしますので、お気軽にご相談ください。
売却の無料相談
買収の無料相談
株式会社日本M&Aセンター
業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。
タクシー業界の
最新M&A事例を解説
タクシー業×タクシー業
日本交通、大阪バスグループとのM&Aでサービス向上へ
- 譲渡企業
- 大バス太平タクシー株式会社(大阪府守口市)、大バス米運タクシー株式会社(大阪府守口市)
- 譲受け企業
- 日本交通グループ関西(大阪府大阪市)、日本交通株式会社(東京都千代田区)
スキーム:株式譲渡 実行時期:2025年3月31日
M&Aの概要
日本交通株式会社は、2025年3月31日付で、大阪バスグループの大バス太平タクシー株式会社と大バス米運タクシー株式会社の全株式を取得し、日本交通の関西エリア子会社である日本交通グループ関西として運営を引き継ぐことを発表しました。このM&Aにより、日本交通グループ関西は、1,679台のタクシーを持つ体制を整え、お客様へのサービス向上を目指します。
まず、日本交通は、東京都に本社を構え、97年の歴史を持つ企業です。「桜にN」マークで知られ、質の高いタクシーサービスを提供しています。
大バス太平タクシーと大バス米運タクシーは、1962年に設立した、一般乗用旅客自動車運送事業を営む企業です。車両台数は、それぞれタクシー96台、タクシー50台を所有しています。両社は、大阪で地域の移動手段として長年信頼を築き、とくに「お客様の安全とサービス向上」を重視しています。
今回のM&Aの目的は、地域の移動に対する社会的なニーズに応えるためです。大阪府や兵庫県では、タクシーの需要が高まっており、これに対応するために日本交通は、両社を傘下に置くことを決定しました。この結果、タクシーの供給力を強化し、より多くのお客様にサービスを提供できるようになります。今後、大バス太平タクシーは「東京・日本交通株式会社(守口第一)」として、大バス米運タクシーは「東京・日本交通株式会社(守口第二)」として運営されます。
これにより、両社の車両は順次、日本交通グループの仕様に切り替えられます。新たに仕様変更されるタクシーは、無線配車センターやタクシーアプリ『GO』を通じて配車されるようになるため、お客様はより便利にサービスを利用できるようになります。
このような変化は、業界全体の効率化やお客様満足度の向上につながります。タクシー業界は競争が激しく、お客様の期待に応えるためには常に進化が求められます。日本交通は「Japan Hospitality」というテーマのもと、お客様のニーズに応じたサービスを提供し続ける意向を示しています。
さらに、各社の企業文化が融合することで、より良いサービスを提供できる環境が整います。これは、例えば異なる地域の特色やお客様のニーズを融合させ、地域に密着したサービスを創出することに似ています。異なる料理を組み合わせて新たな料理を生み出すように、タクシー業界でも新しいサービスの提供が期待されています。
このM&Aは、日本交通にとっても大きな一歩であり、今後の事業展開においても重要な位置を占めることでしょう。地域社会の発展に寄与し、安全で安心な移動手段を提供することが、今後の目標です。日本交通は、この合併を通じて、より多くのお客様に愛されるサービスを目指して邁進していく姿勢を示しています
タクシー業×ライドシェア事業者
ライドシェアのnewmo、大阪の老舗タクシー会社 未来都を買収
- 譲渡企業
- 株式会社未来都(大阪府守口市)
- 譲受け企業
- newmo株式会社(東京都港区)
スキーム:株式譲渡 実行時期:2024年7月4日
M&Aの概要
newmo株式会社は、2024年7月4日に、大阪市を中心にタクシー事業を展開する株式会社未来都(みらいと)を買収したことを発表しました。この買収により、newmoはタクシー業界でのさらなる成長を目指します。
まず、newmoはライドシェア事業を運営しており、今後の計画として2025年度中に「全国主要地域での展開」「タクシー車両数3,000台」「ドライバー数1万人」を目指しています。ライドシェアとは、個人が自分の車を使って他の人を運ぶサービスであり、利用者にとっては便利で、また運営側にとっては効率的なビジネスモデルです。
一方、未来都は60年以上の歴史を持つ、大阪に根ざしたタクシー会社です。地域のニーズに応えながら、信頼されるサービスを提供してきました。
近年は働き手不足や移動難民といった問題が深刻化していました。このような背景から、タクシー業界全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や経営基盤の強化が求められています。
newmoが未来都の経営権を取得することで、これらの課題を共に解決し、より良いサービスを提供することを目指しています。具体的には、タクシー業界にIT技術を活用し、効率的な経営を実現するための取り組みが期待されます。
今回の買収によって、newmoグループは合計646台のタクシー車両を保有することになり、これは大阪府内のタクシー事業者の中で5位の規模となります。これにより、地域におけるサービス提供能力が向上し、より多くのお客様に対応できるようになります。
今後、newmoは大阪エリアだけでなく、全国のタクシー会社との資本提携を進め、IT技術を駆使してタクシー業界全体の効率化や人材採用への投資を行う方針です。このような取り組みは、業界全体の発展に寄与すると同時に、利用者にとっても利便性の高い移動手段を提供することにつながるでしょう。
タクシー業界の
M&Aニュース
タクシー業界のM&Aニュースを表示します。
-
2024.11.13
大和自動車交通、旅客自動車運送事業などの十全交通を買収
-
2022.7.5
第一交通産業の子会社第一交通サービス、苫小牧観光ハイヤーの株式取得、子会社化
-
2022.5.13
大和自動車交通、ガソリンスタンドを運営する宮園砿油を株式交換により完全子会社化へ
-
2020.10.14
大和自動車交通の子会社、総合メンテナンス事業を展開するトータルメンテナンスジャパンの全株式取得、子会社化へ
-
2020.3.23
大和自動車交通(9082)、新設分割により丸井自動車の事業を承継
-
2020.3.3
第一交通産業(9035)の子会社第一交通サービス、三重県のタカモリタクシーの全株式取得、子会社化
-
2020.2.12
第一交通産業(9035)、連結子会社である第一交通サービスが玖珂駅構内タクシーの全株式取得
-
2019.8.1
第一交通産業(9035)グループの戸畑第一交通、戸畑タクシーより事業譲り受け
-
2019.7.19
第一交通産業(9035)、子会社を通じてはとタクシーの全株式を取得
-
2018.9.3
第一交通産業(9035)、小倉商工会館の発行済株式約80%を取得
タクシー業界の
M&A仲介実績
日本M&Aセンターが仲介・支援して成約したタクシー業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2025年9月までの実績を掲載しています。次回の更新(2025年10月~12月分)は2026年1月30日以降の予定です。
| 譲渡・売却企業 | 譲受け・買収企業 | |
|---|---|---|
| 2025年9月 | トラック運送(中国・四国) | 日用雑貨製造(関東) |
| 2025年9月 | トラック運送(東海・北陸) | トラック運送(東海・北陸) |
| 2025年9月 | タクシー(関東) | タクシー(東海・北陸) |
| 2025年9月 | 倉庫(海外) | 倉庫(関西) |
| 2025年9月 | 運送関連サービス(東海・北陸) | 自動車小売(関西) |
| 2025年8月 | トラック運送(中国・四国) | トラック運送(中国・四国) |
| 2025年7月 | トラック運送(九州・沖縄) | 漁業(九州・沖縄) |
| 2025年7月 | トラック運送(関東) | ファンド(関東) |
| 2025年6月 | トラック運送(関東) | トラック運送(東海・北陸) |
| 2025年6月 | 運送関連サービス(関東) | エネルギー(関東) |
タクシー業界の
最新のM&A事例インタビュー
当社の仲介によりM&A・事業承継されたタクシー業界の事例を、経営者様へのインタビュー形式でご紹介します。
タクシー業界の
セミナー情報
当社では、M&Aや事業承継をはじめ、経営に役立つさまざまセミナーを開催しております。ぜひご参加ください。
