事業承継ガイド

従業員等への社内承継

【従業員等への社内承継】とは

従業員等への社内承継のイメージ

従業員等への社内承継とは、親族以外の役員・従業員等に会社を承継する方法です。
オーナーが株を保有したまま社長の地位を譲るケースや、将来親族等への承継の中継ぎとして従業員へ一時的に承継されるケースも見られます。
社内の後継者候補としては、共同創業者、経営者の右腕を担ってきた役員、優秀な若手経営陣など様々です。

【従業員等への社内承継】のメリットと注意点

従業員等への承継は、経営能力のある人材を見極めてから承継ができることや、長年勤続する従業員であれば経営方針等の一貫性を保ちやすいといったメリットがあります。

一方、後継者候補の家族、現経営者の親族といった関係者の理解を得ること、株式や事業用資産を有償譲渡する場合の資金調達が容易ではないことなど、特有の課題もあります。

従業員等への承継のメリット

会社・事業に詳しい人にスムーズに承継できる
現経営者の思いや社風、業務や現場をよく知っている人に承継するため、スムーズな事業承継が期待できます。
経営者としての資質・適性の見極めができる
これまでの会社に対する貢献、働きぶりから後継者としての適性を見極め、判断することができます。

従業員等への承継の注意点・デメリット

適任者がいないおそれがある
後継者となる社員には、経営への強い意思に加え、資金面・債務保証のリスクを負う覚悟も求められます。その両面が求められるために、適任者が見つかりにくい側面があります。
後継者に求められる株式取得等の資金力問題
経営権=株式であり、経営者やオーナーからの株式買取資金は中小企業でも数億円から数十億円かかるケースも少なくありません。有償譲渡になるケースが多い社内承継の場合は、相続税対策が不要になる一方、資金調達面の壁が立ちはだかります。
個人債務保証の引き継ぎ
一般的には、後継者が借入金の個人保証を行うことになります。リスクへの理解や説明が、後継者や後継者の家族に対して必要となります。

【従業員等への社内承継】の
主な流れ

従業員等への社内承継を円滑に進めるためには、いくつかの押さえておくべきポイントがあります。
それぞれについて見ていきましょう。

事業承継に
向けた準備

経営状況・経営課題などの把握

事業承継を円滑に進めるには、まず会社の経営状況や経営課題等を正確に把握・見える化し、今後に向けて方向性を見出すことが必要です。また、会社の状況のみだけでなく、事業承継に関しての課題も見える化しましょう。
これらの情報や思考を整理するために、関連ツールを用いたり、身近な専門家にアドバイスを求めることで効率的に取り組むことができます。

経営状況・経営課題などの把握

経営状況・経営課題などの把握のイメージ

【参考】:関連サイト(外部リンク)

ローカルベンチマーク(経済産業省)
企業の経営状況を把握・分析するためのツールです。

経営デザインシート(首相官邸 知的財産戦略本部)
企業の将来を構想するための思考補助ツールです。

事業承継に向けた経営改善

事業承継は、経営者交代を機に事業を大きく発展させる機会でもあります。
現経営者には、次世代にバトンを渡すまで、事業の維持・発展に努めると共に、経営改善によってより良い状態に磨き上げてから、後継者に事業を引き継ぐことが望まれます。

「磨き上げ」は、業績改善や経費削減にとどまらず、商品やブランドイメージ、優良な顧客、金融機関や株主との良好な関係、優秀な人材、知的財産権や営業上のノウハウ、法令遵守体制など多岐にわたります。
効率的に進めるために士業等専門家や金融機関等の助言を得ることも有益です。

事業承継に向けた経営改善

円滑な引継ぎ
に向けて

後継者候補の選定・意思確認

従業員承継の後継者は、年齢層、直前の役職など、属性が多様であることが特徴の一つです。

また、後継者が経営者になることについての認識が弱いことや、後継者候補の家族、現経営者の親族といった関係者の理解を得ること、株式や事業用資産を有償譲渡する場合の資金調達が容易ではないことなど、特有の課題があります。

後継者候補との対話を早くから行い、後継者候補やその家族の不安を解消するための取り組みと、資金負担や債務保証等の軽減につながる譲歩・努力など、協力を惜しまない姿勢が重要となります。

事前に課題を把握した上で早めに準備に着手することが求められます。

後継者候補の選定・意思確認

後継者候補の選定・意思確認のイメージ

事業承継計画の策定

具体的に事業承継を進めていくにあたり「いつ、どのように、何を、誰に承継するのか」について、具体的な計画を立案しなければなりません。この計画が「事業承継計画」です。

事業承継計画は、後継者と共同で、取引先や従業員、取引金融機関等との関係を念頭に置いて策定します。
策定後は、関係者と共有しておけると、協力が得られやすく、信頼関係維持にもつながります。

規定のフォーマットはありませんが、中小企業庁が提供しているフォーマットを用いることで、効率的に作成が進められるでしょう。

事業承継計画の策定

【参考】:関連サイト(外部リンク)

事業承継計画の作成(中小企業庁)
事業承継計画の作成例と計画表フォーマットです。

関係者への周知

後継者が選定されたら、親族や従業員、取引先企業、金融機関等へ周知を行います。特に複数の親族が会社の株主となっている場合、後にトラブルに発展することもあります。そうしたトラブルを回避するためにも、あらかじめ周囲の理解を得ておくことが必要です。承継がスムーズに進められるよう、環境を整えておきましょう。

関係者への周知

関係者への周知のイメージ

事業承継計画の実施

事業承継計画に沿って資産の移転や経営権の移譲を実行していきます。実行段階においては、状況の変化等を踏まえて随時、事業承継計画を修正・ブラッシュアップすることも必要になります。

後継者の育成という点においては、経理、総務、営業から経営企画に至るまで幅広い業務を経験させることや、後継者塾や経営者会合等に参加させること、社内の重要プロジェクトを遂行させることなどが考えられます。こうした取組にて、後継者候補が事業の将来性や会社経営を理解すること、他の役員・従業員や取引先をはじめとする関係者からの信頼獲得などにつながる効果も期待できます。

また、後継者の経営を安定させるためには一定数の株式や事業用資産の取得が必要となります。
円滑な従業員承継には、資金調達の成否が非常に重要であると同時に、従業員承継の実現を阻む高いハードルとなっています。

従来は、金融機関からの融資によって株式や事業用資産の取得資金を調達することが多かったですが、近年は、後継者の能力や事業の将来性を見込んで、ファンドやベンチャーキャピタル等からの投資によってMBOやEBOを実行する事例も見られます。

事業承継計画の実施

引継ぎ後

事業承継を契機とした成長・発展

環境の変化が早い昨今においては、先代が営んできた事業を守ることだけが正解とは限りません。

事業承継を機に、先代経営者が行ってきた既存の事業を活かしつつ、自社の知的資産や事業環境を踏まえ、新分野へ進出するなど、新しい成長を目指すことも求められます。
そこには、生産性向上のためのデジタル化の推進なども含まれます。

伝統を守ることと、新たなステージへと成長するための変化、両方が必要となってきます。

事業承継を契機とした成長・発展

事業承継を契機とした成長・発展のイメージ

まずは無料で
ご相談ください。

「自分でもできる?」「従業員にどう言えば?」 そんな不安があるのは当たり前です。お気軽にご相談ください。

事業承継・M&Aの無料相談はこちら