東証一部上場 証券コード 2127
No.2127

中堅・中小企業のM&A仲介実績No.1

future フューチャーVol.9 (2015.9発行)

新たな価値創造型M&A~ジャパンシステムとネットカムシステムズのケース~

<特別インタビュー> ―ITソフトウェア業界のM&A事例より―

SIerと映像処理技術の融合により、
新たなマーケット、製品、サービスを提供していく「価値創造型M&A」

ジャパンシステム株式会社 代表取締役社長 阪口 正担 氏
上席執行役員 経営企画本部長 鈴木 邦夫 氏

ジャパンシステムは、IT業界において45年以上の業歴を誇る老舗企業で、システム基盤事業、エンタープライズ事業、公共事業の3つの事業を柱とし、ソリューションおよびサービスを提供している。2015年7月、日本M&Aセンター仲介により、監視用ネットワークカメラやマンモグラフィ(乳がん診断装置)等の画像処理ソフトウェアの開発を得意とするネットカムシステムズとのM&Aを実現。
今回、ジャパンシステム阪口正担社長と鈴木邦夫上席執行役員に、先のM&Aを振り返りながら、事業戦略とM&Aの活用方針について語ってもらった。

(聞き手:日本M&Aセンター 企業戦略部 上席課長 西川 大介)

M&Aを通じて「技術力」と「販路」を育成するために要する時間を買う

―業界動向を踏まえた貴社の経営課題や業界再編の見方はどのようなものでしょうか。

阪口: 「SIer型ビジネスモデル」は、近年各企業のIT投資が活発化し好調です。一方で、IT技術者不足が懸念され、労働集約型サービスの限界が見えてきていますから、「SIer型ビジネスモデル」に依存しないモデルに転換することが不可欠と考えています。当社はそのための取り組みを開始していますが、例えば、クラウド、モバイル、ビックデータ、IoTといった新潮流に沿ったサービスをお客様に提供するために、当社の得意とする技術を組み合わせる「水平分業型パートナー」と協業し、スピードを加速して実行していくことが重要な経営課題です。これを業務提携やM&Aを上手く活用して実現していこうと考えています。

―より具体的に貴社のM&Aの考え方についてお聞かせいただけますか。

鈴木: 人月商売を主体としたSIer型ビジネスモデルは、今後徐々に減少していくことが想定されるので、技術力と販路を育て上げるために要する「時間を買う」という考え方に基づきM&Aを検討しています。具体的には、企業戦略に責任を持つ経営企画本部が主体となって、差別化された自社開発技術を保有するIT企業や当社が手薄な業種に強いIT企業を、継続的に探索しています。と言いましても、実際にこれまで検討させて頂いた案件の殆どは、規模の拡大、販路の拡大が主軸になっていました。狙っている分野や技術はあるのですが、合致した優良な案件にめぐり会うことは難しく、買収によるネガティブ効果を上回る相乗効果を発揮できる案件は殆どありませんでした。

M&Aは時間をかければ成功するわけではない
「100件に1件の案件」だからこそスピードを重視

―今回弊社で仲介させて頂いたネットカムシステムズ社とのM&Aですが、ご提案差し上げた当初の貴社内の検討状況について教えて頂けますか。

阪口: まさに当社が目指している企業買収の要件を満たしている会社と認識しました。優れた技術力と顧客視点での発想ができ、当社の技術と相乗効果を発揮したビジネスモデルの実現を可能にできる会社でした。その後、分析を進め、取り組んでいくことに自信を持ちました。「流れ玉」にあたらないために、なぜ売却したいのかの真の理由を聞き、過剰な有利子負債がないか、財務内容と成長性はどうか、いわゆるお見合いですから誠実な会社かを確認しました。私は社内で「爆速」という言葉を使いますが、M&Aは時間をかけて検討すれば成功するわけではありません。自社にとって優れた案件は100件に1件あるかどうかと思っています。

鈴木: 但し、取締役会で取締役を説得することは簡単ではありませんでした。IT企業は人が財産、技術力を携えた人材が辞めたらどうするのかという問題点です。当社グループに加わることで、双方にとってより相乗効果が発揮できることを説明し、ようやく意向表明する承認を得ました。

両社の技術・得意業種の融合による新たなビジネスモデルの創造

―ネットカムシステムズ社とのM&Aにおいて、どのような点を評価されましたか。

阪口: ネットカムシステムズ社がマルチプラットフォームの下での画像処理技術に優れたことです。2020年の東京五輪に向けて、画像処理技術とセキュリティ技術の融合は、情報技術インフラとして様々なビジネス機会を創造できると考えました。特にB2B或いはB2B2Cのソリューションの幅出しを図り、エンドユーザーの満足を得る多種多様なビジネスモデルの実現に直接的、間接的に貢献できると感じました。

―検討当時、ネットカムシステムズ社とのM&Aによってどのような相乗効果を得られると想定されましたか。

阪口: 例えば、防犯、監視、プライバシー管理、ビッグデータによる行動測定は、国内だけでなく、「画像 x セキュリティ」で、五輪後に世界進出へと導くものと考えました。更に、まち・ひと・しごと創生法が施行され、地方密着型サービスが加速されていきますが、地方自治体へのICT支援で実績のある当社は、ネットカムシステムズ社のネットワークカメラの活用やマンモグラフィーなどを活用した検診などを含む地域包括ケアサービスシステムなどの整備に貢献できると考えました。

鈴木: また、副次的な効果ではありますが、ネットカムシステムズ社は、相互信頼に基づく社員個々人による「挑戦」をとても大切にされている会社でした。当社の社員が失いつつある「ベンチャー精神」を持たれており、これは当社全社員が良い刺激を受けると考えました。

M&Aにより社員が当社の使命を再確認

―今回のM&Aが成立してまだ間もないですが、現状についてお聞かせ下さい。

鈴木: 絶大なる求心力をもった前社長(金延純男氏)には、創業会長兼最高顧問として継続してご支援頂いております。ネットカムシステムズ社の幹部及び社員の皆さんは、技術とお客さま視点を大切にした誠実な方々です。私どもは、既存の当社の社員へも良い影響を与えるであろうネットカムシステムズ社の挑戦と相互信頼の精神を維持し、イコールパートナーであることをお約束しています。不安があるのは当然ですが、シナジー効果を発揮することで乗り越えられると確信しています。両社のお客さまにも、最良のパートナーであることをご理解いただいていると思います。
阪口: 我々がお客様に提供するサービスは、業務プロセスの機能ではなく、お客さまが使うことによる心地よさや楽しさです。その意味において、セキュリティ技術と画像処理技術の融合、つまり本件M&Aの実行を通して、当社のこれからの使命が「モノを売るのでなく、コトを売ることである」と、役員や社員が実感してくれる大きなきっかけになったと思っています。

―M&Aを成功させるためには、PMI(Post Merger Integration)の取り組み状況はいかがでしょうか。

鈴木: 当社は上場会社ですので、上場会社としての会計処理および金商法に基づく内部統制に関してPMIのプロジェクトを編成し整備している最中です。また、事業上の相乗効果を発揮するために技術的な取り組みを開始しています。
買収前は、ネットカムシステムズ社がなぜ大手企業より優れた製品力を生み出せるのかが分かりませんでした。買収後になぜかが分かりました。企業秘密ですが、さすがネットカムシステムズ社、その素晴らしいところは維持していきます。

トップの「先を見る力」と参謀の「リスクを読み切る力」

―本件M&Aでは、阪口社長と鈴木上席執行役員が見事な連携プレーで案件をスムーズに進めてこられた印象がありますが、その点どのように振り返られますか。

阪口: トップの「先を見る力」と参謀の「リスクを読み切る力」、これらのハーモニーが成功要因と考えます。色々な仲介会社がさまざまな案件を提案してきますが、この役割分担で、それらの案件の良しあしを読み切る力が不可欠と考えています。

―最後に、今回のM&Aに対するご感想と、今後のM&Aに対する取り組み方針とについてお聞かせ下さい。

阪口: 今回、素晴らしい案件を日本M&Aセンター様に提案していただき、感謝しています。短期間で決断しなければなりませんでした。今回は、100件に1件あるかないか、何が何でも取りに行かなければ2度と機会はない、そのように位置付けました。しかし、IT会社の買収で一番困難なことは、IT技術者の力量が分からないこと。この点、日本M&Aセンター様には、誠意をもって助言頂き、的確な判断ができました。ありがとうございました。
IT業界におけるM&Aの成功要因は、技術力は前提ですが、誠実な人間力、未来志向風土、お客様視点での発想力、社員の豊かさを大切にする文化を持った会社であるかです。そのような視点を重視して、今後もM&Aには積極的に取り組んでいまいります。

ジャパンシステム株式会社 代表取締役社長 阪口 正担 氏
ジャパンシステム株式会社
代表取締役社長 阪口 正担 氏

1947年10月5日生まれ。日立エンジニアリング株式会社、日本ディジタルイクイップメント株式会社、日本ヒューレット・パッカード株式会社を経て、2009年ジャパンシステム株式会社入社、同年代表取締役社長に就任。
ジャパンシステム株式会社 上席執行役員 経営企画本部長 鈴木 邦夫 氏
ジャパンシステム株式会社
上席執行役員 経営企画本部長 鈴木 邦夫 氏

1956年2月1日生まれ。日本ヒューレット・パッカード株式会社等を経て、2015年ジャパンシステム株式会社入社、同年上席執行役員管理部門担当兼経営企画本部長に就任。

Future vol.9

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