コラム

M&Aにおいて大切な必要書類の準備

三好 鉄弥

株式会社バトンズ シニアアドバイザー

M&A全般
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M&Aでの譲渡を決断し、M&Aを進め始めたオーナー経営者は、多くの準備をしていただくことになります。 その一つが「必要資料の整備・作成」です。日本M&Aセンターでは、こうした書類の作成や整備もサポートしておりますが、全体像は社長ご本人にも把握していただかなくてはなりません。 主な必要資料として、決算書・税務申告書はもちろん、定款、就業規則や不動産登記簿謄本など、相当な量の資料準備が必要になります。 なぜこれが必要なのかというと、買手企業がM&Aを検討する上で、事前に日本M&Aセンターが企業資料を確認し、その企業のどのような点をアピールすれば魅力がより伝わるかを考え、企業紹介資料(企業概要書・企業評価書)に落とし込んでいくためです。 この資料収集から紹介資料作成までのプロセスを当社では「案件化」と呼んでおり、具体的には下記図の「資料提供」から「企業概要書(詳細)の作成」までを指します。

M&Aの手順・プロセスの流れ

このプロセスがあることで、譲渡企業と譲受け企業、双方のリスクをあらかじめ最小限に抑えることができます。 日本M&Aセンターでは、長年の経験からこのプロセスを最重要と考え、業務品質向上のために今でも業務工程の改良を重ねています。 資料作成や整備は大変ですが、M&A成立直前に買収監査で致命的な論点が発覚するといった事態が少なくなり、結果として成約率が高くなるからです。 それでは、必要資料の準備が不十分であったために、正確な情報提供が困難となり、破談やトラブルになった例を3つ挙げます。

株主名簿がなかった!連絡が取れない株主がいる!

株主名簿が正確に作成されていない場合はもちろん、名簿すらない中小企業は多いものです。 真の株主が誰なのか把握できなかったり、株主が行方不明で連絡がとれない、というケースでは調査に大変な労力がかかってしまいます。特に、株価が高くて(純資産が大きくて)、株主数が多く、過去に売買や相続などで株主の変更があった場合は、必ず履歴が残るようにしておきましょう。

不動産の登記簿謄本がない!これは未登記物件?!

未登記の物件があるケースなどです。破談になることは少ないものの、調査で費用が発生したり、条件交渉で更なる時間を費やしたりと作業が増えることになります。事務所や工場の増築や改築で、建物が複雑な構造になっていたり、簡易なものとして登記していない物件については注意が必要です。

実態に即した賃貸借契約書がない!

借り手が会社、貸し手が企業オーナー個人の場合、契約書自体がないケースがよくあります。賃借料が周辺相場と比較してかなり乖離していると、M&Aの条件交渉の際に税務リスクや適正な価格への調整が検討事項となります。 第三者との賃貸借契約においては、M&A実施後に契約内容通りに更新されない場合や、M&Aをきっかけに賃料交渉や退去要請が稀にあったりしますので、日頃から貸主とのコミュニケーションをとっておきましょう。

今からできることがあります

M&Aにおいては、検討事項や利害関係者が数多く存在しており、買手企業が正確に売手企業を把握しなければトラブルの元となります。「いつかはM&Aを」と考えているなら、今からできる準備をしておいてください!

  • 相続などで株主が分散している場合は、なるべく意思決定権者に株をまとめておく
  • 不動産登記など、法令に従って必要なことはやっておく
  • 契約関係の整理や人的ノウハウなどの明確化など、なるべく情報を共有できる状態にしておく

ほかにもいろいろとありますが、M&Aの事前準備についてアドバイスがほしい場合は、ぜひお問い合わせください。

事前準備資料についての詳細はこちらをご覧ください

著者

三好 鉄弥

三好みよし 鉄弥てつや

株式会社バトンズ シニアアドバイザー

『大手証券会社を経て、日本M&Aセンター入社。これまで地域金融機関、西日本の有力な会計事務所へ事業承継業務の啓蒙活動に尽力してきた。これまで携わってきた案件は100件以上、幅広い業種をこなせるオールラウンドプレーヤー。三方良し(みよし)の精神で、中小企業の存続と発展に貢献している。

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