病院・クリニック業界のM&Aと事業承継の動向・案件情報2024年最新版

病院・クリニック業界のM&A

病院・クリニック業界では、社会全体の高齢化や行政施策の影響などにより、M&Aの活発化が見受けられます。こちらでは、医療業界特有の課題や最新のM&A動向を解説。病院・クリニック業界の課題や市場環境、よりよい医業継承を実現するための情報を提供します。

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M&A案件(売却・事業承継案件)

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    病院・クリニック
    地域
    北海道
    売上高
    5億円~10億円

    地域密着型の経営 病床稼働率が高い

  • No.14041 NEW

    病院・クリニック
    地域
    九州・沖縄地方
    売上高
    非公開

    ・40年近く続く地域に根付く産婦人科 ・ハイリスク出産にも対応した連携施設が多い ・交通量の多い交差点に位置し、場所が良い

  • No.13937

    病院・クリニック
    地域
    関東地方
    売上高
    2億円未満

    好立地 長年の実績

  • No.13969

    病院・クリニック
    地域
    関東地方
    売上高
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  • No.13933

    病院・クリニック
    地域
    非公開
    売上高
    5億円~10億円

    地域において競合が少ない

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病院・クリニック業界の
M&A買収ニーズ

買収・譲受け企業からの要望の一部をご紹介します。具体的な買い手候補企業のご提案は、会社売却先シミュレーションから、無料でお試しいただけます。

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病院・クリニックの
譲渡・売却を検討

病院・クリニック業界及び介護・福祉業界のM&A案件(譲受け・買い案件)一覧

病院・クリニック業界の
承継問題について

近年、日本の経営者全体の高齢化が進行する中、病院・クリニック(診療所)業界でも経営者の高齢化が進んでいます。厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調統計」によれば、2018年度の病院の開設者・医療法人の代表者の平均年齢は64.3歳。企業全体の経営者の平均年齢59.7歳に比べ、病院・医療法人の代表者の平均年齢は高い水準で推移しています。
診療所・クリニックの医院承継においては、親子や親族間での親族内承継がメジャーでしたが、近年では、後継者不足や経営難から戦略的に第三者によるM&Aを選択されるケースも増えています。医療機関が廃業すると、従業員だけでなく、周辺住民や地域医療体制に影響を与える可能性があり、病院・診療所の事業承継は、他の業界に比べてもとくに社会的意義が高い課題といえます。
病院・クリニックにおいて、後継者の育成や事業承継は一朝一夕でできるものではありません。事業承継を考えるタイミングは、現院長の健康状態やライフプランを踏まえたうえで決定する必要があります。後継者の選定、承継方法の検討、後継者の育成、経営課題の共有を含めた承継期間も考えると、引き継ぎには時間がかかります。最適な医院承継のためには、気力の充実した50代後半から相続・リタイアについて検討されることをおすすめします。

病院・クリニック業界のトピックス

  • 後継者問題が深刻化
  • 医療資源の分散・偏在
  • 医師の働き方改革
  • 施設の老朽化、耐震問題による大規模修繕や設備投資
  • 診療報酬改定や度重なる医療制度の見直し
  • 医療法人版事業承継税制(医療法人に係る納税猶予制度)

「後継者不在」問題の傾向とその影響

全国・全業種約27万社を対象とした帝国データバンクの2022年「後継者不在率」動向調査によると、5年連続で後継者不在率が低下。2022年の不在率は57.2%と、2019年以降で初めて60%を下回り、後継者問題に改善傾向にあることが見受けられました。コロナ禍の中、多くの中小企業が自社事業の将来性に向き合う中で、改めて後継者不在問題を考える経営者が増えたこと。また、中小企業庁の事業承継・引継ぎサポートや金融機関などによる相談窓口が全国に広がったことにより、親族・従業員以外の第三者へのM&Aや事業承継、ファンドを経由した経営再建併用の事業承継の認知が広がったことが考えられます。

その中でも医療業界では、後継者不在問題が深刻です。業種詳細別では、医療業は後継者不在率68.0%と全業種の中でも2番目に高く、全体の平均(57.2)から10pt以上上回る数値となりました。2021年の不在率71.2%からはやや改善が見られたものの、依然として医療業の後継者不在率は高い水準となっています。
こちらの調査は、現時点において後継者が決まっていないケースも含まれるため、すべての医療施設で後継者問題を抱えているというわけではありません。ただし、ほかの業界平均に比べ、高い後継者不在率が続いていることは、地域医療体制の存続という観点からも看過できない状況といえます。当社にご相談いただく中でも、後継者不在問題の改善は喫緊の課題であります。

業種詳細別 後継者不在率 上位・下位5業種

不在率 上位5業種 2021 2022 前年比
専門サービス 72.6 68.1 △4.5pt
医療業 71.2 68.0 △3.2pt
職別工事業 70.6 67.1 △3.5pt
自動車・自転車小売 69.0 66.7 △2.3pt
広告・調査・情報サービス 70.1 65.7 △4.4pt
不在率 下位5業種 2021 2022 前年比
金融・保険業 45.3 41.3 △4.0pt
化学工業、石油・石炭製品製造 47.7 43.3 △4.4pt
パルプ・紙・紙加工品製造 47.2 44.8 △2.4pt
ゴム製品製造 50.0 45.3 △4.7pt
窯業・土木製品製造 50.7 46.6 △4.1pt

データ出典:帝国データバンク/全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)

医療法人の後継者不在の理由

病院・クリニックの多くが医療法人の形式をとっていますが、医療法人の理事長は医師・歯科医師の有資格者から選任する必要があります。理事長のご子息も医師というケースは多いのですが、あえてわが子に継がせないという選択を選ばれるケースが増えています。
経営者という立場は、医師個人とは異なる責任が伴い、求められる知識やスキルも変わります。さらに、診療報酬や薬価の引き下げ、老朽化した設備の更新など、経営難からの脱却策としてもM&Aが選ばれることが増えています。近年の経営環境の厳しさが増す中で、わが子に苦労させたくないという親心が働く場合もありましょう。
下記のような問題に対する認識と、後継者世代との間の意識ギャップを理解した上で、早期に承継についての話し合いを進めることが重要となります。

家業承継への意識の変化

かつては、家業を継ぐことが一般的でしたが、現代ではそのような封建的な考えを持つ人が少なくなっています。ご親族に医師がいたとしても、医療への取り組み方の違い、経営に関する方針の違いから、他の医療機関の勤務医を選ばれるケースもあります。親から子への病院経営の承継が自動的に進むとは限らず、この意識の変化も親族承継が減っている要因と言えます。

医療体制の再編と不確定性、経営環境の厳しさ

医療業界の経営環境は以前と比べて厳しさを増しています。国内の人口減少とそれに伴う医療費の圧縮圧力が背景にあり、医療業の収益性が低下しています。医業経営が以前ほど魅力的でなくなっていることが、親族承継が減っている一因となっています。
また、地域医療体制の再編や、リハビリ・回復期病床ニーズの増加など、医療環境の変化により、今後の病院経営環境の不透明さが増しています。さらに、生産年齢人口の減少に伴い、医療業界でも求人難が進行しており、「働き方改革」によって労務管理の難度も増しています。特に地方の病院ではスタッフ不足が深刻で、この問題はさらに病院経営を困難にしています。

医療法人はその性質上、株式会社と違い、利益追求を主目的にはしませんが、適切な医療サービスの提供を維持するために、経営の安定と持続性が重要となります。このような状況下で、経営の継承や資金調達手段として、より多くの医療法人がM&Aを選択する道へと進んでいます。
これには、M&A自体の認知度向上も影響しています。M&Aを支援する専門機関やサービスの充実により、医療法人にとってもM&Aが選択しやすい環境が整ってきています。親族承継に限らず、第三者承継を検討するという選択肢が増えたことは、病院経営の幅が広がったと考えることもできるでしょう。

病院・クリニック業界の
M&A活用のメリット

病院・クリニック業界におけるM&A活用のメリットをご紹介します。

譲渡側のメリット
  • 地域医療のための病院存続
  • 後継者問題の解決
  • 創業者利潤の確保
  • グループ経営により規模・生産性の向上、収益性の確保
  • 医師や看護師の確保
  • 資金力強化による設備投資
  • 個人保証・担保提供の重圧からの開放
  • 医業への集中・専念
譲受け側のメリット
  • 拠点・医師や看護師等の確保
  • 病床規制、地域参入障壁の回避
  • 規模拡大による経済的メリット

譲渡・売却側のメリット

地域医療の維持

医療施設は地域社会にとって非常に重要な役割を担っています。医療法人制度の目的の一つは地域医療の永続性の確保です。医療法人が廃院や経営難に直面している場合でも、M&Aにより事業を存続させることができ、地域の医療体制を維持できます。

従業員の雇用保障

後継者不在や経営難によって医療法人が解散を迫られている場合、M&Aは現従業員の雇用を保障する手段となります。これは、組織の社会的責任を果たし、従業員に対する不安を軽減し、職場の安定性を確保することにつながります。

買収・譲受側のメリット

病床規制、地域参入障壁の回避とビジネスエリアの拡大

医療法人のM&Aは、事業規模を大幅に拡大する機会を作り出します。具体的なメリットは次のとおりです。

  • 同一医療圏で増床が難しい地域でも病床数を増やせる(合併)
  • 医療設備や人員確保によって、診察・入院医療体制を強化できる
  • 多店舗展開・グループ経営ができる
  • コストやリスクを抑えて、新規拠点が確保できる

とくに、病院・医療法人の開設や増床を行うためには、開設地域の都道府県知事などから許可を受ける必要があります。その地域の病床数の上限に達している場合など、規制により自力で病床規模を増やすことが難しい場合でも、既存の医療法人と合併することで病床数を増やすことが可能です。病床数は、各自治体の医療計画に基づいて決められていますので、医療法人の経営戦略におけるM&Aの大きなメリットのひとつです。

(例)医療法人A(100床)と医療法人B(50床)が合併した場合

合併前
医療法人A 医療法人B
一般病床 一般病床
100床 50床
合併後
医療法人A
一般病床 療養病床
120床 30床

人材獲得のチャンス

M&Aは、売り手側の優秀な人材、例えば、経験豊富な医師や看護師、事務職員などを新たに採用する手間なく獲得できます。また、経営幹部や後継者となりうる人材を確保する優れた機会となります。これは組織に新たなエネルギーと視点をもたらし、経営効率を高める可能性があります。

節税の恩恵

M&Aの一部の手法では、売り手の負債を引き継ぐことがあります。法人の場合、発生した繰越欠損金は、7年もしくは9年間繰り越すことができます。そのため、売上が黒字となった年と相殺すること可能です。負債を使って売上を相殺し、法人税や法人住民税などの節税が可能となります。

医療法人のM&Aは、病院経営に大きな機会を創出してくれますが、複雑なプロセスを伴うため入念な計画と専門的な助言が必要となります。M&Aの恩恵を最大限に引き出すことができるよう、病院・クリニック業界に精通した専門家から適切なサポートを受けることをおすすめします。

病院・クリニック業界で
M&Aを実行する際のポイント

病院・クリニック業界でM&Aを実行する際に注意すべきポイントには、下記のようなものがあります。

  • 有利なM&Aスキームの検討
  • 行政との折衝・許認可の引継ぎ
  • 医療法人開設主体により異なる手続き
  • 優秀な医師・看護師の継続雇用
  • 営利企業とは異なり買手候補が限定的

M&Aスキームの検討

医療法人は事業会社と異なり株式を発行していないため、病院・クリニックのM&Aでは「合併」や「出資持分譲渡」、「事業譲渡」、「法人格の売買」といった手法が用いられます。

合併 2つ以上の法人を1つの法人に統合します。
吸収合併と新設合併とがあり、吸収合併が一般的です。
出資持分譲渡 議決を行使できる社員たる地位を譲渡します。
※1.出資持分ありの医療法人を売却する場合 ※2.社員=出資者であることが多いことから出資持分譲渡という形で行われます。
事業譲渡 特定の事業に関する資産等を一括して他の法人に譲渡します。
閉鎖と開設を同時に行うことから行政の理解が前提となります。
法人格の売買 法人格のみを承継します。譲渡側の資産や負債などは引き継がれません。

合併や事業譲渡は事前に行政に申請し、許可を得る必要があり、手続期間が長くかかります。
出資持分譲渡は、理事長含む役員等の変更届出および理事長の変更登記を行えば、比較的短期間でM&Aを行えます。

行政との折衝・許認可の引継ぎ

医療機関の承継に関しては多岐に渡る行政手続きが必要となります。そのため、対象となる継承形態に合わせた申請および書類を確認し、適切に対応することが重要です。

行政手続きに関しては医療機関の設立形態などにより継承方法や必要な手続きは異なります。厚生労働省の「医療施設(動態)調査・病院報告の概況」によると、2021年の病院は8,205施設に対して、医療法人が69.2%、個人は1.7%。一般診療所は104,292施設あり、このうち医療法人が43.2%、次いで個人が38.6%を占めます。 とくに多数を占める「医療法人」と「個人」の間では下記のような違いがあります。

個人事業主の継承に関する手続き

  1. 所轄の保健所に対して、「廃止届」を提出する(譲渡する側)、「開設届」を提出する(承継する側)。レントゲン設備がある場合、「廃止届」を提出(譲渡する側)、「設置届」を提出(承継する側)。
  2. 厚生局に対して、「保険医療機関廃止届」を提出(譲渡する側)、「保険医療機関指定申請書」を提出(承継する側)。
  3. 雇用関連の手続き:社会保険事務所や労働局などへの手続きが必要(スタッフを引き継ぐ場合)。

医療法人の継承に関する手続き

  1. 所轄の都道府県に対して、「登記事項変更完了届」「役員変更届」を提出する(理事長交代など)。
  2. 法務局に対して、「医療法人変更登記申請書」を提出する。
    ※なお、医療法人クリニックの場合、医療スタッフは医療法人と雇用契約を締結しているため、個人クリニックのような雇用関連の手続きは基本的に不要です。

運営形態 申請先 申請内容 必要書類
個人事業主 厚生局 前院長:保険医療機関廃止届
新院長:保険医療機関指定申請書
・保険医登録票の写し
・引継書※管轄による
保健所 前院長:廃止届
新院長:開設届※開設後10日以内
・医師免許証
・経歴書
・建物周辺見取り図
・建物平面図
・譲渡契約書
・その他必要書類
前院長:レントゲン廃止届
新院長:レントゲン設置届
・レントゲン漏洩検査報告書
医療法人 厚生局 保険医療機関届出事項変更届 ・保険医療機関指定通知書(原本)
・保険医登録票の写し
・役員変更届の写し
法務局 医療法人変更登記申請書
(理事長変更登記)
・印鑑証明書
・旧理事長の辞任届
・新理事長の就任承諾書
・社員総会議事録
・理事会議事録
・新理事長の医師免許証の写し
都道府県 登記事項変更完了届 ・履歴事項全部証明書
役員変更届 ・理事会議事録
・社員総会議事録
・旧理事長の辞任届
・新理事長の就任承諾書
・新理事長の経歴書
・新理事長の印鑑証明
・新理事長の医師免許証

個人・医療法人、どちらの形態でも、公費診療(原爆・結核・難病・生活保護等)や労働災害の診療を行う場合には、市区町村及び都道府県へ公費指定医療機関の申請や都道府県労働局へ労災指定医療機関の申請が必要となります。
また、これらの手続きを適切に行うためには、譲渡する医師がこれまで行っていた診療を事前に確認し、譲り受け側が診療を継続するものについては、継承時に漏れが無いように申請を行う必要があります。

医療法人開設主体により異なる手続き

医療法人の類型によって、合併後の法人類型が変わってきます。
例えば、「持分なし医療法人」と「持分なし医療法人」が合併した場合は、「持分なし医療法人」となります。「持分なし医療法人」と「持分あり医療法人」が合併する場合は、「持分なし医療法人」しか選択することができません。
「持分あり医療法人」と「持分あり医療法人」が合併する場合は、「持分なし」か「持分あり」のいずれかを選択することができます。合併により新たに法人を設立する場合は「持分なし社団」、合併前の法人が存続する場合は「持分あり医療法人」となります。
「社団医療法人」と「財団医療法人」が合併する場合は、「持分なし医療法人」または「財団医療法人」となります。

合併前の法人類型 合併後の法人類型
持分なし社団医療法人 持分なし社団医療法人 持分なし社団医療法人
持分なし社団医療法人 持分あり社団医療法人 持分なし社団医療法人
持分あり社団医療法人 持分あり社団医療法人 新設合併:持分なし社団医療法人
吸収合併:持分あり社団医療法人
財団医療法人 財団医療法人 財団医療法人
持分なし社団医療法人 財団医療法人 持分なし社団医療法人
または、財団医療法人
持分あり社団医療法人 財団医療法人 持分なし社団医療法人
または、財団医療法人

医療介護支援の専門チームが戦略をサポート

医療機関のM&Aには、業界特有の専門知識や法規制への対応、行政との連携が求められます。日本M&Aセンターでは、医療介護に特化した専門チームが、高度なコンサルティングサービスを提供。「出資持分の取扱い」や「施設・事業の譲渡」「病床移転」「合併」など多岐にわたる課題を解決します。座学では得られない、数多くの成功体験に基づいた知見とノウハウで、貴院のM&Aを成功へと導きます。
ご検討段階でもお気軽にご相談ください。

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株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部

株式会社日本M&Aセンター

業界別M&Aレポート編集部は、日本M&Aセンターの社員によって執筆・運営されています。各業界・業種のM&Aや事業承継に関する情報、トピックをお届けします。

病院・クリニック業界の
最新M&A事例を解説

近年に実施された病院・クリニック業界のM&A事例を解説とともにご紹介します。公共性の高い病院・医療法人は収益化が難しく、老朽化による設備投資の増加、赤字経営の立て直しなどの課題が見受けられます。

日本郵政による逓信ていしん病院の事業譲渡

譲渡企業
日本郵政株式会社(東京都千代田区/6178)

スキーム:事業譲渡/病院機能移転

逓信ていしん病院は、旧郵政省の前身である逓信省の職域病院として、1938年に設立されました。1986年に保険医療機関指定承認を受け一般開放され、関係者以外の一般の患者の利用も可能となりました。郵政省、日本郵政公社が運営し、省庁再編や公社化・民営化を経て、2007年からは日本郵政株式会社が運営する病院(企業立病院※)として、全国14病院を引き継ぎました。しかし、逓信病院は50~100床の中小規模のものが多く、2004年にスタートした臨床研修医制度に伴う大学医局所属医師不足による医師の引き上げ、医師の地域偏在、診療科の需給不均衡等により、医師確保に苦慮しており、そのため医師不足等による患者減少傾向にありました。地域医療との連携、救急医療の強化等による増収対策、委託契約見直しによる経費節減等により個々の病院の状況を踏まえた経営改善を進めても患者数の減少傾向が続き、年間約50~60億円の営業損失が生じていました。
日本郵政は2015年の株式上場前後から、病院事業を縮小し、以下の通り事業譲渡等を実施。2023年現在では、東京逓信病院(東京都千代田区)のみが残っています。

※本来、医療法上の規定により、企業は病院や診療所を開設することはできません。しかし、同法が施行された1948年(昭和23年10月27日)以前に開設されていたものについては例外的に運営が認められています。

病院(病床数) 譲り受け・移転先
2015 新潟逓信病院(52床) 社会医療法人 新潟臨港保健会へ事業譲渡
神戸逓信病院(95床) 医療法人社団 南淡千遙会(平成医療福祉グループ)へ事業譲渡
仙台逓信病院(130床) 医療法人財団明理会(IMSグループ)へ事業譲渡
2016 大阪北逓信病院(73床) 閉院
2017 札幌逓信病院(98床) 医療法人 晴生会(葵会グループ)へ事業譲渡
横浜逓信病院(93床) 社会福祉法人 恩賜財団 済生会へ事業譲渡
徳島逓信病院(51床) 医療法人 平成博愛会(平成医療福祉グループ)へ事業譲渡
2018 鹿児島逓信病院(50床) 国立病院機構鹿児島医療センターに病院機能移転
2019 福岡逓信病院(192床) 医療法人社団 高邦会(国際医療福祉大学グループ)へ事業譲渡
名古屋逓信病院(96床) 医療法人社団 葵会(葵会グループ)へ事業譲渡
富山逓信病院(50床) 富山市へ事業譲渡
2022 広島逓信病院(110床) 医療法人社団 生和会へ事業譲渡
京都逓信病院(99床) 医療法人 知音会(親友会グループ)へ事業譲渡

[2017]日本郵政株式会社、横浜逓信病院を社会福祉法人恩賜財団済生会へ事業譲渡

2017年4月1日付で、社会福祉法人恩賜財団済生会が日本郵政株式会社(東京都千代田区/6178)から横浜逓信病院(横浜市神奈川区/93床)を譲り受けました。
本件にあたり、済生会グループは、近隣で急性期と回復期を担う済生会神奈川県病院(横浜市神奈川区/199床)および、隣接する横浜市鶴見区で高度急性期を担う済生会横浜市東部病院(横浜市鶴見区/560床)と機能分化を図るとともに周辺の医療機関と連携し、横浜市東部地域の医療ニーズに対応した地域完結型医療体制を構築するとしています。
事業譲渡後は、旧施設を回復期リハビリテーションに特化した専門病院として改修。神奈川県済生会が運営する「済生会東神奈川リハビリテーション病院」として、2018年2月にオープンしました。
同年には横浜のほかに、札幌逓信病院を葵会グループの医療法人晴生会へ、徳島逓信病院を医療法人平成博愛会へと、それぞれ譲渡しています。

[2022]広島逓信病院・京都逓信病院、地域の医療法人へ事業譲渡

2022年9月15日、日本郵政は、全国で経営する逓信病院のうち、広島逓信病院(110床)と京都逓信病院(99床)の病院を、2022年10月1日付で売却することを発表しました。
日本郵政は、地域連携や病床機能の転換、人間ドック受検者増等、病院事業の改善対策に取り組んでいました。しかしながら、2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響もあり、2019年度の医業損益は、3病院(東京・京都・広島)で33億円の赤字となっており、厳しい経営状況にありました。
本件譲渡について、日本郵政は「経営改善に努めてきたが、病院経営を専業とする医療法人に任せた方が患者や地域医療にとって好ましいと判断した」と説明しています。
民営化時には14拠点あった逓信病院は売却や閉院が進められ、本件譲渡により、東京逓信病院が残るのみとなります。

日本動物高度医療センター、動物用医療機器メーカーのテルコムを子会社化

譲渡企業
テルコム株式会社(神奈川県横浜市)
※2022年売上高約7億円、営業利益1.6億円
譲受企業
株式会社日本動物高度医療センター(神奈川県川崎市/6039)

実行時期:2022年3月 スキーム:株式譲渡/子会社化

売り手のテルコム株式会社は、家庭用ペットの在宅ケアのために作られた動物用の酸素濃縮器「酸素ハウス」(酸素濃縮器、ケージ、酸素濃度計などのセット)の製造、レンタル、ICU・麻酔器接続用酸素濃縮器の製造販売をおこなっています。
日本動物高度医療センターは、ペット(犬・猫)向けの二次診療を専門に行う総合動物病院を運営しています。地域のかかりつけの動物病院(一次診療施設)からの紹介による完全予約制で、高度医療を専門に請け負う二次診療施設です。総合病院である川崎本院と、東京、名古屋、大阪の4拠点に展開。2023年現在、東京証券取引所グロース市場に上場している、国内で唯一の上場動物病院です。

M&A概要

2022年3月18日、動物用医療機器メーカーのテルコムは、日本動物高度医療センターへ全株式の譲渡を完了し、同社を子会社化しました。
テルコムは動物の在宅医療に必要な「酸素ハウス」の製造・販売・貸与を手がけており、高度かつ総合的な動物医療サービスを提供する日本動物高度医療センターと親和性が高いビジネスです。テルコムの子会社化後からは、従来通り飼い主や一次診療施設へのサービス提供に努めつつ、同社グループ各社との協力体制構築による経営効率改善を進めています。その結果、初診数は前年同期比7.0%増、総診療数は前年同期比0.1%減、手術数は前年同期比10.3%増。2023年3月期の連結経常利益は前期比21.9%増の5.3億円となり、14期連続増収、3期連続増益で着地しています。

国内初の上場動物病院

2015年、日本動物高度医療センターは動物病院として国内で初めて株式上場を果たしました。日本では、病院・クリニックなどの医療機関を運営するには、「医療法人」または「個人事業主」(医師)であることが求められます。医療法上、営利を目的とした病院・クリニックの開設は許可されないことになっています。そのため、株式会社による病院経営は原則許されておらず、株式会社や非医師の個人が病院を経営することは極めて制限されています。動物専門とはいえ、医療機関を運営する会社の上場は日本動物高度医療センターが初めてですから、業界内外から注目されました。
同グループは、かかりつけの動物病院とのコミュニケーション強化を継続するとともに、学会における発表・報告等の活動を積極的に行うなど、動物医療業界における信頼の獲得、認知度の向上と、それに伴う紹介症例数の増加に努めています。

病院・クリニック業界の
M&A仲介実績

日本M&Aセンターが仲介・支援して成約した病院・クリニック業界のM&A案件をご紹介します。
※現在、2023年12月までの実績を掲載しています。次回の更新(2024年1月~3月分)は2024年4月30日以降の予定です。

譲渡・売却企業 譲受け・買収企業
2023年12月 病院(九州・沖縄) ファンド(関東)
2023年12月 医療関連サービス(関東) クリニック(関東)
2023年12月 クリニック(関西) クリニック(関西)
2023年12月 病院(九州・沖縄) 病院(九州・沖縄)
2023年12月 病院(東海・北陸) 病院(東海・北陸)
2023年11月 病院(関東) クリニック(関東)
2023年10月 クリニック(九州・沖縄) 医療関連サービス(東海・北陸)
2023年10月 病院(九州・沖縄) 病院(関東)
2023年9月 クリニック(関東) クリニック(関東)
2023年9月 病院(関東) 病院(関東)

病院・クリニック業界及び介護・福祉業界のM&A仲介実績一覧

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